Sunday, 30 March 2025

マロリーの手紙

暫く前から「終活」なる言葉が横行している。人生の終わりに向かって身辺を整理・準備する。アルバムや日常品の廃棄から始まって、お墓を買ったり遺言書を書いたり、いくら暇を持て余しているとは言え、何か違うのではと常々思っている。

人はいつ終わりが来るのか誰もが予期できない。植物人間で100歳まで行くのか、将又交通事故で明日その日が来るのか、正に神様のみが知る人の運命である。せめて最後の時まで、精一杯生きるのが人の道と思っている。だから前倒しで整理する何てとんでもいない。

処が自身が死んだあと、その日記が白日の下に晒さたらと心配になる一冊があった。それは長年のファンであるジェフリー・アーチャーの小説で、「遥かなる未踏峰(Paths Of Glory)」である。物語はエヴェレストの初登頂を試みた英国登山家のマロリーの話であった。彼は稀有な運動能力でエベレストの初登頂に抜擢されたが、最後は暫くして頂上付近で遺体が発見された。初登頂したのかしなかったのか、当時は国の威信が掛かっていたので大きな話題になった。

J.アーチャーはその謎を解明しようと、マロリーが妻のルースに宛てた手紙を解読して本にした。勿論遺族の同意を得ていたのだろうが、流石この手法には不快感が募った。

漱石や鴎外の初恋の手紙もそうだったが、これは禁じ手である。ファンには垂涎ものかも知れないが、墓場の陰から「そんな事しないでくれ!」と声が聞こえてくる気がする。そう思うと終活なんて嫌な言葉だが、強ち聞き流せないのである。

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