Monday, 6 January 2025

USスチールの買収

日鉄が買収しようとしたUSスチールだが、バイデン大統領の政治判断で阻止された。咄嗟に思ったのは「その付けを誰が払うのだろう?」の素朴な疑問だった。先方の経営と労組も賛成していたのに、全米労組が反対し大統領選挙に政治利用されてしまったようだ。所詮これは経済の話だから、また二転三転あるかも知れない。

そもそも、アメリカの製鉄産業の斜陽はいつ、どこから来たのだろう。先日、元鉄鋼会社の人に聞いてみると、それは90年代から始まり、「ヒトがいなくなった」のが原因と言う。優秀な技術者は南のサンベルト地帯や東海岸、シリコンバレーに行ってしまい、鉄鋼、自動車産業には来ないらしい。だから今ではこの一帯を、ラストベルト(錆びついた工業地帯)と呼んでいる。 

 アメリカの製鉄会社がここまで持っているのは、(手前味噌かも知れないが)日本の製鉄各社が長い間現地に人を派遣して、技術支援して来たからかも知れない。ただ嘗ては世界一の粗鋼生産を誇った日本の鉄鋼産業も、今や中国の1/10以下である。誠に情けない限りである。 

日本の製鉄技術で、大きく成長を遂げたのがその中国である。代表的なのは70年代の宝山製鉄であった。山崎豊子の「大地の子」の舞台にもなり、仲代達也演じる日本の技術者と、上川隆也こと陸一心の日本人残留孤児の物語には胸が詰まった。文革で疲弊した中国を救ったのは、日本の鉄鋼技術だった。

 韓国の浦項(ポハン)製鉄もあった。新日鉄の支援で進められ、韓国の経済成長のエンジンになった。ところが昨今の徴用工の資産差し押さえなど、恩を仇で返された気分である。今回の事件を通じて日本の人の好さと、業界の不条理を感じるのである。

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