Monday, 23 December 2024

トンカツの話

日本食が世界を魅了しているという。聊かクールジャパン戦略の前つば的な感じもするが、昔から寿司や天ぷらが好まれたのは事実だ。その後ラーメン、和牛、煎餅が続き、最近ではおにぎりが人気と言う。個人的には次はトンカツと思っている。

 箸でも切れる柔らかいポークは世界でも稀だし、食感のいい千切りキャベツと絶妙なソース、ご飯とみそ汁のバランスは何とも言えない。味は老舗のトンカツ専門店なら間違いないし、チェーン店のかつ屋や松屋なども殆ど遜色ない。

ただトンカツは所詮ポーク、豚はイスラム教やユダヤ人は基本的に食べない食材だ。その辺が世界的な展開の障害になるかも知れない。

むかし出張で来た白人男性を、ランチでトンカツ屋に連れて行った事がある。彼は最初何も言わなかったが、箸を付ける段階になって「自分はユダヤ教だから食べない」と切り出されてビックリした事があった。

 浜本隆志氏「拷問と処刑の西洋史」の中に、中世スペインのユダヤ人狩りの話が出ていた。マラーノと呼ばれるキリスト教化したユダヤ人を見つけ出す話であった。

異端審問所は豚を食べなかった女に疑威を掛けた。彼女は「豚を食べなかったのは、ただ食べたくなかっただけです」と抵抗したが、ボックと呼ばれる木馬型拷問台に乗せられると、遂に「自分はユダヤ教徒です」と自白したという。いつぞや、ストックホルムの博物館でそのボックを見た事がある。鋭角の屋根に裸で座らせれると想像しただけで、背筋が寒くなった記憶がある。

 ただイスラム教徒でも酒を飲む人は多いし、トンカツもポークとは別物と考えて食べている人もいる気がするが・・・。

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