氏は根っからの山男で、それが嵩じて今に至っているのが分かった。山男はプロの登山家や山岳ガイドになる人が多い中で、実業家の道を選んだ稀な人だった。山一筋の人生に、それもこうして未だに山登りを続けている体力と精神力に、敬意と羨望を寄せるのであった。
モンベルには時々行くが、何時も豊富な品揃えには感心させられる。特にウェアもいいが、シューズが安価で耐久性に優れているので気に入っている。今回その機能性が、氏の長年の体験が裏打ちしているかと分かり、これを契機にファンになった。
まだ連載の半ばだが、高校生で始めた本格登山の西穂高が出てきた。今ではロープウェイで簡単に山小屋に行けるが、当時は足で登っていた。奥穂に向かうジャンダルムにも難儀したようで、私の遠いありし日を思い出した。
それは30歳前半の頃だったか、新穂高温泉からロープウェイで小屋に泊まり、翌朝奥穂を目指した歩き始めた時だった。折しもその日は朝から雨が降っていた。暫くすると雷が鳴り始めた。爆弾のような轟音が、しかも山だから下から突き上げて来た。
辺りには誰もいない。雷が至近距離で鳴り響く恐怖は、想像以上であった。途中に「天狗のコル」や「馬の背」と呼ばれる岩場があった。足も滑るし滑落の恐怖が過った。何日か前に、迂回して抱いていた岩ごと落ちた人の話も聞いていたから猶更だった。
もうそんな高い山に登る事はないだろう。でもあの時行ったからこそ、少し氏に共感できたのかも知れない。
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