Thursday, 28 November 2024

ビブグルマンのグルメ旅

先日、久しぶりに天ぷらの「つな八」に行った。昼を過ぎているというのに、結構な人で混んでいた。見ると年配客が多く、酒を飲みながら旬の揚げ物を楽しんでいた。つな八は今年で100周年という。戦時中も営業していたようで、その歴史が味に染み込んでいるようだった。

 美味しいものを食べると幸せな気分になる。ただ長年あえてグルメとは一線を画して来た。自分でもその理由がよく分からないが、食の欲望にはキリがないから、一度ハマると麻薬のように後戻りが出来ない恐怖が過ったのかも知れない。また食を追求すると、他の大事なことを忘れるのでは?という心配もあった。

ただ最近、もうそろそろそんな修業も終わりにしてもいいか?と思えてきた。歳のせいかも知れない。早速ミシュランガイドの「東京」を買ってみると、厳選された店が見事に整理されていて読み物としても面白かった。中でも気に入ったのが「ビブグルマン(Bib Gourmand)」と呼ばれるコスパ以上の満足が得られる店である。 

 イタリアンの元祖落合シェフの「La Bettola da Ochiai」、ラーメンの「こてつ」、フレンチの「Kinoshita」など片っ端から行ってみると、ミシュランの選定眼通りで美味かった。もう接待で行くようにゴージャスな星付きレストランは不要だから、これで十分である。 

 レストランに行くのには、もう一つ目的がある。それはアルバムのように旅を振り返るのである。東京には各国の店が多いから、居ながらにして海外旅行の気分に浸れる。渋谷のオーストラリア料理「Arossa」や銀座のギリシャ料理「Apollo」は本場以上だし、錦糸町のルーマニア「La Mihai」も面白い親父がやっていた。

 最後に、美味しいものをより美味しく味わう為に、家を出る前に軽くジョッグをしている。すると適度な疲労感と空腹感で、最初のビールがグッと違ってくる。

Tuesday, 26 November 2024

錦織選手の復活

嘗ては熱狂したテニスも、昨年フェデラーが引退し、今年はナダルも選手生活にピリオドを打った。ビック4のマレーもジョコビッチのコーチになるなど、往年の選手が次々と消えていくと、次第に関心も薄らでいる今日この頃である。

そんな中、錦織選手が復活を遂げているのは明るいニュースだ。チャレンジャーに勝って、来年のグランドスラムに出れる100位辺りまで上がって来た。もうピークを過ぎているのでどこまで頑張れるのか分からないが、現金なもので又テレビ中継が気になり始めている。 

 尤もグランドスラムとなると、2週間に渡り毎回5セットを戦い続けなくてはならない。そんな体力が彼にあるのか、一番知っているのは本人だろうが・・・。

年齢を重ねると体力の低下を痛感する。JOPと呼ばれる公式戦に出てみると、最近の4試合、ファーストセットは取ってもセカンドセットで息が上がり、最後のタイムブレークで逆転負けするケースが続いた。流石モチベーションも下がるし、「所詮勝負ごとには向いていない」が頭を過ぎる。 

強い人にはそれなりの訳がある。勿論酒やタバコはやらないし、朝晩のストレッチとジョギング、食生活も含めて生活の殆どをテニスにつぎ込んでいる。意外と体育の先生や日体大のOBなど運動系で来た人が多いのも特徴だ。スポーツ共有のツボを心得ているから、力の入らない反作用で打っている。

Thursday, 21 November 2024

知事選の復讐劇

兵庫知事選で前知事の斉藤氏が再選された。2カ月前に失職した時は四面楚歌、これで終わりかと思ったがまさか結末だった。SNSの力で終盤一挙に流れが変わったらしいが、フェイクニュースもあるしネットの世界は怖しい。

注目されるのは、今まで議会や市町村会で散々非難していた人たちである。「死んだと思っていた人が現れた」かのような顔が滑稽であった。この流れが続けば今度は自身の政治生命が危うくなってくる。ドラマの幕が切って落とされ、次は市町村長の選挙である。

(不謹慎かも知れないが)人はこうした復讐劇が大好きである。復讐をテーマにした作品は多い。代表的な小説はA.デュマの「モンテクリスト」である。無実の罪を着せられたダンテスがモンテクリスト伯爵になって戻って来る。自身を嵌めた政敵に対し、人知れずに復讐を果たす件は、何度読んでも痛快である。

日本なら差し詰め「忠臣蔵」だろう。最後の吉良邸討ち入りも然る事ながら、亡き殿の無念を果たす忠義と武士道は時代を超えて共感する。

吉村昭氏の「敵討」もあった。殺された父の仇を探しに日本国中を行脚する男の話である。最後は本懐を遂げるのだが、人生を仇討ち一本に絞る時代が凄かった。

映画では「ランボー」「ダーティーハリー」「レヴェナント」「ドラゴンタツゥ-の女」「ボーダーライン」・・・と思い出せばキリがない。復讐は東西共通のテーマである。

これから兵庫県民がどう出るか、机を叩いて批判していた市長さんもどうなるのか、SNSの世界だけに中々先が読めないが、暫くは目を離せない。

Monday, 18 November 2024

登山家の死

山と聞くと、真っ先に思い出すのは登山家の故山田昇氏である。若い頃、西武百貨店が主催する冬山教室に参加した事があった。二泊三日の合宿で、滑落防止やアイゼンの歩き方を教えてもらった。そこに当時日本を代表する世界的クライマーの山田さんが来ていた。

氏は当時8000m級の14座の内、9座を制覇した世界的クライマーだった。その時はそんな偉業も知らず、食事が終わると体験談を話してくれた。生死を彷徨った一流の人の話はとても面白く、特に頂上でのトイレの話は耳に残った。それから暫くして、McKinleyの冬山で逝ってしまった。

もう1人、身近にNさんと言う鉄人がいた。Nさんは植村直己氏のエベレスト遠征にも参加した本格派で、「青春を山にかけて」にも登場した人だった。40歳を過ぎて金融界に入り、仕事の方でも一流を証明してみせた。そのNさんが(山の事故ではなかったが)亡くなった時に、盛大なお別れ会が披かれた。 

山仲間や仕事関係の沢山の人が集まり、弔辞を読んだのは大会社の社長さんだった。一ツ橋山岳部の同僚だった。その時知ったのだが、一ツ橋山岳部のOBは大町に別荘を買うという。大町は白馬や槍ヶ岳への起点である。晩年はそこを拠点に仲間と山を満喫するらしい。聞いていて、その繋がりがとても羨ましく思えた。

最近、日本を代表するクライマーの平出和也さんと中島健郎さんが亡くなった。K2に登攀中に滑落したという。諏訪のローカルニュースで、生前の平出氏と家族とのビデオが紹介されていた。植村さんの時もそうだったが、奥さんのサバサバした感じが気になった。生死を共にしていたかのようで、その姿に打たれた。

Saturday, 16 November 2024

モンベルの話

今月の日経新聞「私の履歴書」は、モンベルの創業者の辰野勇氏である。モンベルのウェアーや靴は良く愛用していたが、その沿革は知らなかったので興味深く読ませて頂いている。

 氏は根っからの山男で、それが嵩じて今に至っているのが分かった。山男はプロの登山家や山岳ガイドになる人が多い中で、実業家の道を選んだ稀な人だった。山一筋の人生に、それもこうして未だに山登りを続けている体力と精神力に、敬意と羨望を寄せるのであった。
 
モンベルには時々行くが、何時も豊富な品揃えには感心させられる。特にウェアもいいが、シューズが安価で耐久性に優れているので気に入っている。今回その機能性が、氏の長年の体験が裏打ちしているかと分かり、これを契機にファンになった。

 まだ連載の半ばだが、高校生で始めた本格登山の西穂高が出てきた。今ではロープウェイで簡単に山小屋に行けるが、当時は足で登っていた。奥穂に向かうジャンダルムにも難儀したようで、私の遠いありし日を思い出した。 

 それは30歳前半の頃だったか、新穂高温泉からロープウェイで小屋に泊まり、翌朝奥穂を目指した歩き始めた時だった。折しもその日は朝から雨が降っていた。暫くすると雷が鳴り始めた。爆弾のような轟音が、しかも山だから下から突き上げて来た。

辺りには誰もいない。雷が至近距離で鳴り響く恐怖は、想像以上であった。途中に「天狗のコル」や「馬の背」と呼ばれる岩場があった。足も滑るし滑落の恐怖が過った。何日か前に、迂回して抱いていた岩ごと落ちた人の話も聞いていたから猶更だった。

 もうそんな高い山に登る事はないだろう。でもあの時行ったからこそ、少し氏に共感できたのかも知れない。

Monday, 11 November 2024

トランプと白人支持層

アメリカ大統領選挙が終わり、 トランプが再選を果たした。予想では接戦と出ていたが、終わってみれば圧勝だった。やはりバイデン時代に景気が滞った事や、有色のしかも女性の大統領には抵抗が強かったのかも知れない。

アメリカ政治については全くの素人だが、見ていて一つ思い出した事があった。それは白人の支持層、取り分け3年前の議事堂襲撃の時に、デモに参加した男たちである。 

 何年か前に首都ワシントンを訪れた時だった。時期は5月、それはメモリアルディー(戦没者追悼記念日)の日だった。第二次大戦やベトナム戦争、朝鮮戦争の記念碑には沢山の人が集まっていた。特に目を惹いたのは、ハーレーダビッドソンで来た白人の一行だった。 

 プロレスラーのような体格に立派な髭を蓄え、革ジャンに赤いバンダナとレイバンのサングラスが定番だった。全国から集まったのだろうか、街を埋め尽くす凄い数のライダーだった。勿論その人達と議事堂襲撃で乱入した人とは全く関係がないのだが、何故かその風貌が良く似ていた。 

暫く前に、「Mr ノーバディ(Nobody)」という映画もあった。普段は大人しい中年の白人が、チンピラ相手に正義を発揮する作品だった。クリント・イーストウッドの「許されざる者(Unforgiven)」も同じで、老齢のカーボーイが一人で悪に立ち向かう話だった。トランプの熱烈な支持層も、きっとそんな作品が好きなのだろう。

アメリカでは白人層が段々マイノリティーになりつつある。数だけでなく経済的にも弱者になろうとしている。その不満がトランプを熱烈に支持するのは良く分かる。

Wednesday, 6 November 2024

軟水は味の決め手

来日の外国人観光客に人気があるのが、日本の食である。寿司やラーメンは元より、天プラ、トンカツ、おにぎりと幅広い。確かに欧米のシンプルなメニューに比べると種類が豊富である。作り方も丁寧だし、特に出汁が絶妙なのだろう。

最近、その隠された秘密が分かった。それは軟水の力である。軟水は「水に含まれるカルシウムやマグネシウムの量が100mg/l以下の水」である。東京の場合は65mg/lだが、東北の福島、宮城、山形になると、更にその1/3程に下がる。軟水の数値が低い程、不純物がない透き通った水になる。

3年ほど前に福島方面に旅した時に、ラーメンがやたらに美味しいのにビックリした。有名な喜多方には行けなかったが、須賀川、郡山などのラーメン屋のスープの味はどれも素晴らしかった。理由はやはり水だったのだ。 

 逆に硬水の国では、水道水は余り飲まない方がいいと言われる。衛生面もあるが、カルシウムの摂取が多くなるからだ。「象足」という言葉がある。華奢で美しいパリジェンヌが歳を取ると、カルシウムが蓄積して足首が太くなる現象である。

 ミネラルウォーターで有名なエビアンは300mg/l、アメリカは30〜120だが、ブリスベンは140と硬水国の数値は高い。だから一度に沢山飲めない。ビールやジュースの瓶も日本に比べて小ぶりなのはその為、水の代わりにワインを飲むのも同じである。

 処で味の決め手が軟水の度数なら、東京の水でどんなに頑張っても限界がある事になる。この辺は、いつかレストランの専門家に聞いてみたいと思っている。