美味しいものを食べると幸せな気分になる。ただ長年あえてグルメとは一線を画して来た。自分でもその理由がよく分からないが、食の欲望にはキリがないから、一度ハマると麻薬のように後戻りが出来ない恐怖が過ったのかも知れない。また食を追求すると、他の大事なことを忘れるのでは?という心配もあった。
ただ最近、もうそろそろそんな修業も終わりにしてもいいか?と思えてきた。歳のせいかも知れない。早速ミシュランガイドの「東京」を買ってみると、厳選された店が見事に整理されていて読み物としても面白かった。中でも気に入ったのが「ビブグルマン(Bib Gourmand)」と呼ばれるコスパ以上の満足が得られる店である。
イタリアンの元祖落合シェフの「La Bettola da Ochiai」、ラーメンの「こてつ」、フレンチの「Kinoshita」など片っ端から行ってみると、ミシュランの選定眼通りで美味かった。もう接待で行くようにゴージャスな星付きレストランは不要だから、これで十分である。
レストランに行くのには、もう一つ目的がある。それはアルバムのように旅を振り返るのである。東京には各国の店が多いから、居ながらにして海外旅行の気分に浸れる。渋谷のオーストラリア料理「Arossa」や銀座のギリシャ料理「Apollo」は本場以上だし、錦糸町のルーマニア「La Mihai」も面白い親父がやっていた。
最後に、美味しいものをより美味しく味わう為に、家を出る前に軽くジョッグをしている。すると適度な疲労感と空腹感で、最初のビールがグッと違ってくる。