Wednesday 16 October 2024

冬支度と木こり

今年も冬支度の季節がやってきた。仕込みは大変だが、薪はあっという間に燃えてしまうので、量の確保が大事だ。1〜2年乾燥させた丸太に斧を落とす。真っ直ぐ育った木なら数回で辺りは付くが、曲がっていたり途中から枝が出ていると中々割れない。性格が悪いと扱い難いのは人間と同じである。薪が無くなれば命に関わるので、このルーチンは大事である。

 問題は焚き木の仕入である。幸い近くに無料の廃材所があるので、入手に困る事はない。ただ大きなトラックがある訳でもないので、素人の運搬には限度がある。

そんな矢先、近くで小規模の伐採が始まった。何やら古木の倒木を懸念した地主が、新築の家に配慮したとか。ビルの3,4階はあるだろうか、木こりは高い木に命綱一本で登っては、上手に枝を落としていく。最近ではヘルメットにトランシーバーが付いているので、下に待ち受ける者との会話は小声だ。

 「これはひょっとしてチャンスかも?」と、思い切って「枝を譲ってくれないか」と聞いてみた。すると快く応諾してくれ、夕方には小型のシャベルカーで自宅まで運んでくれた。3m程の中木が300〜400本はあっただろうか、その量に今更断る訳にも行かず有難く頂戴したが、果たして年内に処理できるか心配になった。

 それにしても、(いつも思うのだが)木こりの顔は実にいい。造園家もそうだが、自然相手の仕事をしている人の目は澄んでいる。その一人がやってきて、私がチェーンソーで切るのを見かね歯を研磨してくれた。流石プロは違う!力を入れずにスパッと切れるようになった。こうした自然を通じた関りが何とも心良い。

Thursday 3 October 2024

サラエボの銃声

安倍さんが銃撃されて2年が経った。安倍派は裏金問題で壊滅、世耕さんは自民党を離党し朋友の麻生さんも勢いを失った。皮肉にも天敵の石破さんが総理になり、一発の銃弾がかくも多くの人々の運命を左右するかと思うと、実に不条理である。

 思い出すのは「サラエボの銃声」である。ボツニア系セルビア人の撃った弾がオーストリア皇太子に当たり、第一次世界大戦が切って落とされた事件である。その一発で1000万人の命が失われることになった。

犯人の男はその時パンを食べていた。そこに偶然皇太子の馬車が通り掛かり、咄嗟に飛び出て撃った。馬車はその前に起きた爆発の負傷者を見舞いに、病院へ向かう途中だった。

普段ならば大通りを通る予定が、近道をしようと狭い路地に入った時だった。銃撃場所の壁にはプレートが掛かっていた。直前のルート変更は、後のJFKの時と同じだった

 犯人の男の名前はプリンツィップ(Princip)という。彼は事件後プラハ郊外のテレジンという収容所に収監された。テレジン収容所は第二次大戦に入り、ポーランドの最終処理場に向かう大きな中継収容所になった。何年か前にそこを訪れた時、プリンツィップの写真を発見してビックリ、世界を混乱に陥れた男の末路は虚しかった。

余談だが、彼は今ではセルビアの英雄になり、ベオグラードには銅像も建っているらしい。確かにハプスブルク家の支配から解放されたセルビアかも知れないが、それはこじ付けである。伊藤博文を撃った安重根の銅像もそうだが、暗殺は美化してはいけない。