Tuesday, 17 September 2024

山岳レンジャーの救助

富士山に多くの外国人登山者が押し寄せている。オーバーツーリズムである。中には軽装で来るので、途中で体調を崩す人も多い。救助班の世話になっている人を見ると、「もっと準備して来いよ!」と思ってしまう。ただ不肖私も昔、彼らに助けられた一人だったから偉そうなことは言えない。

場所はグランドキャニオン、20歳の時だった。夏休みにアメリカの国立公園を軍用のシェラフ一つでキャンプして廻った時だった。満点の星を見ながらの野宿は快適であった。その日は、日の出と共に谷を下り始めた。

エンジェルトレールと称する灼熱の山道を歩く事13㎞、夕方には谷底に到着した。早速コロラド川に飛び込んで涼を取った。川沿いには多くの登山客が同じように寛いでいた。

 夕食を取りそろそろ寝ようかと思った時、アメリカ人の男二人組が寄って来た。「これから登らないか?」という。どうやら私の持っていた懐中電灯が気になったらしく、比較的涼しい夜道にその明かりで戻る事を考えたらしい。

 (未だに何故同行したのか思い出せないが)誘われるがままに、男が私の懐中電灯を持ち、先導する形で歩き始めた。処が次第に足取りが重たくなってきた。男は軽装なのに対し、此方は30㎏の荷物を担いでいたからだ。当然疲労に差が出始めた。陽が昇り明るくなり始めると、男達は無情にも「Thank you!」と言って去って行った。 

 砂漠の道を照らす太陽で40℃位はあっただろうか?遂に昼前に体が動かなくなってしまった。上から下りてくる登山者に「大丈夫か?」と声掛けられても、出るのはため息だけだった。そして遂に、後から登って来た人に救助を求めた。暫くしてレンジャーがロバと共にやって来た。ロバの背中にしがみ付き、人目を憚りながら何とか一命を取り留めたのであった。

 ホテルに入り鏡に映る姿を見て、骨と皮に干し上がっていたのには驚いた。それにしても、あの時のレンジャーは騎兵隊のようで恰好良かった。

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