まずアテネに着いて驚かされたのは、落書きの多さである。至る所の壁や施設にペンキが塗られていた。2009年から始まった財政危機の煽りなのか、一見人心の荒廃ともみれたが、当時の人々、取り分け若者の怒りが伝わって来た。
一連の発端は政府による財政赤字の隠ぺいだった。GDP比で5%の財政赤字は実は12%もあった。背景には国民の4人に1人は公務員で定年は53歳、年金は現役時代と同じ額が支給されるなど、財政破綻は縁故主義の蔓延だった。
EUは緊急支援の見返りに改革を迫ると、失業率は2014年には26%にも上がった。勤勉をモットーとする西洋流のリストラにも反感があり、落書きに繋がったようだ。ギリシャ人は肌が黒いし、ギリシャ正教はキリスト教でもイスラム教でもない。その特殊な民族性と、それでも何とか西洋社会の中で生きるジレンマだった気がする。
改革は消費税が未だに23%と高いように道半ばである。ただ今の治安はいいし、街も落ち着きを取り戻していた。オリーブとレモンをふんだんに使ったギリシャ料理はヘルシーで飽きが来ないし、何より素朴なワインが美味しい。
ソクラテスやプラトンを生んだ栄光の古代、ローマとビザンチンの間の微妙な立ち位置、その過去の遺産で生きる観光立国、エメラルドのエーゲ海と白い大理石に代表される風景を思い出しながら、これから旅を振り返ってみたい。
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