Saturday, 24 February 2024

オットーという男

高齢化の時代とは言え、長生きすればお金も掛かるし身体も弱くなる。特に伴侶に先立たれたり、病を抱えながら生きるのは大変だ。随分前だが親戚の叔父さんが亡くなった。80歳前半だったか、奥さんが亡くなるとまるで後追いするかのように逝ってしまった。昔気質の人だったので奥さんにも随分と威張っていたが、嘘のような最後だった。

そんな事を思い出しのは、昨年公開された映画「オットーという男(A Man Called Otto)」だった。トム・ハンクス演じる老人が愛妻に先立たれて、そのショックで何度か自殺を試みるが、危ない処で近所の人に助けられる話である。トム・ハンクスでなかったらとても観られたものではなかったかも知れないが、やけに共感を誘われた。 

 もう一つ、昔の小説「白い犬とワルツ(To Dance With A White Dog)」も、これを契機に読み直してみた。物語はオットーと同じで、奥さんに先立たれて孤独になる老人の話である。ただオットーの元に現れたのが猫だったのに対し、此方は犬だった。普段は目にも止まらない捨て猫や捨て犬だが、いざという時には孤独を癒す伴侶になるのであった。 

 処でこうした孤独は、都会生活と深い関係があるとかねがね思っている。リースマンの「群衆の孤独」ではないが、人は他人に囲まれた都会で孤独感を感じる一方で、自然の中ではそれがないからだ。確かに山を歩いていると、心細いが寂しいとは思わない。 

 都会は近くにスーパーや病院があって便利だが、その便利さが逆に曲者である。定年を契機に群馬の田舎に移ったOさんは、自給自足用の畑仕事や水の汲み出しが日課である。冬の寒さに備えて薪を仕込むの大変だ。薪はあっと言う間に燃えてしまうが、チェーンで切って乾燥させ斧を入れる作業は、膨大な時間と体力が要る。ただその自然と営むルーチンに、生存本能が刺激されるという。

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