彼は「皆さんは富士山と言う答えを期待しているかもしれませんが違います」と前置きしてから、「それは黄色い帽子を被った子供が横断歩道を渡る光景です」と言う。子供が止まった車の運転手にお辞儀する仕草が、何とも珍しく微笑ましいらしい。
確かに言われてみれば、外国では止まった車に会釈する習慣はない。何でも譲り合い謝る国民性の延長だろうが、外国の人から見ると美徳に映るようだ。
昔から外国人に教えられ、初めてその価値に気付くのが日本人である。浮世絵やミシュランの高尾山はそのいい例だが、改めてソフトの部分でも希少価値を認識した次第だった。特に昨今のアラブとユダヤ、ロシアの戦争を思うと、緩やかな国の文化に感謝するのである。
処で私の場合、「フランスに住んで何が一番印象に残ったか?」と聞かれると、大使に準え「エッフェル塔でも凱旋門でもありません、それはフランス人の挨拶です」と答える。
日本の「おはよう」は儀礼的で抑揚がないが、フランス人はボンの次のジュールを一オクターブ上げるイントネーションが特徴である。大きな声で、しかも必ず相手の目を見て話すから猶更インパクトが大きい。この一言で本当に朝が明けた気分になり楽しくなる、正に魔法の言葉である。フランス人の挨拶は世界一である。
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