Friday, 29 September 2023

こんな所に日本人

「こんな所に日本人」というTV番組がある。毎回見ている訳ではないが、アフリカや南米の奥地に住んでいる日本人に驚かされる。日本人は中国人と違ってこういう人は稀である。聞くと色々な事情があるようだが、兎に角逞しい。

1人旅をしていると、そんな日本人に意外な所で出会う。アイルランドの片田舎のホテルの受付に「招き猫」が置いてあった。主人に「これを置いておくとお金が入ってくる!」と話していたら、隣にいた女性が「日本の方ですか?」と云う。イタリア人に嫁いだ日本人女性で子供も一緒だった。「招き猫」が無ければお互い気が付かなかった。 

 ハイデルベルグで会った若いアジア風の女性も、最初は英語で話していたが暫くして日本人だと分かった。フランスのアンティーブのパブで会った男もいた。彼は常連で何故こんな所に住んでいるのか不思議だった。

 かと思えば過去の足跡もある。「アラモの砦」には大正時代に日本人が贈った碑があった。長篠の戦いと思いを重ねたようだった。やはりテキサスの「太平洋戦争記念館」には、ハワイ攻撃で使った酒巻少尉の特殊潜航艇と日本庭園があった。モンマルトルの墓地にもUsuiという立派な墓があった。このブログでも書いたが、そういう時には土地にグッと親近感が湧くのであった。

 先日もサマーセット・モームの「月と6ペンス」を再読していたら、何と日本人が出てきた。場所はマルセイユの港町の酒場であった。彼は日本軍艦の水兵だった。おそらく第一次大戦の頃に寄ったのだろう。明治大正の日本海軍は世界を股にかけていた。

Friday, 22 September 2023

サンフランシスコの死骸船

暫く前にモロッコのマラケシュで大地震があった。映画「カサブランカ」に出てきたような大きなバザールが崩れていた。30年程前に行った時、迷路に迷い込み怖い思いをした事を思い出したりしたが、土で作った家屋は脆かった。

同じ頃、リビアでも大洪水が起きた。ただアフリカの土地勘がないので、こちらは場所が何処なのかピンと来なかった。凡人には行った行かないの経験則は大きい。ただ想像力が逞しい人にとっては、そんな事は問題ではないらしい。 

 「80日間世界一周」で有名なジュール・ベルンは、見た事もないアフリカで立派な探検記を残している。「サハラ砂漠の秘密(L`Etonnante Aventure de la Mission Barsac)は、象牙海岸の奥地を3000㎞旅する小説である。兄の不信な死の汚名を晴らす妹の高貴さと、フランスが19世紀にアフリカに影響力を持っていた様子がうまくマッチしていた。

 同じくジュール・ベルンの中国を舞台にした「必死の逃亡者(Les Triburation D‘un Chinoies en Chine)」もあった。主人公の中国人には父親が残した莫大な財産があった。彼の父親は、開拓史の時代にサンフランシスコで死骸信用金庫の理事長をやっていたからだ。当時は大陸横断鉄道建設に多くの中国人が使われていて、彼らは死ぬと中国に送り返された。その運搬船を「死骸船」と呼び、父親はその事業で莫大な財を築いたのであった。

 ただここまで来ると、どこまで本当の話なのか流石に疑わしい。一方でどちらも一度も行った事がないのによく書けると感心してしまう。流石SF小説の元祖であった。

Thursday, 14 September 2023

テート美術館展

未だ暑さが続くが、暦の上ではもう秋である。秋は芸術の季節、ならばと開催中のテート美術館展に行ってみた。行ってビックリ、平日なのに多くの人が並んでいた。既に来場者も10万人を超えたというから、入場料を2200円として2億円以上の収入になる。賃料がいくらか知らないが、きっと企画は成功したのだろう。

目に付いたのは来場者の装いだった。気のせいか奇抜な服装の若い女性が目立った。美大関係の人だろうか?、将又会場は乃木坂の一等地だからおしゃ目的なのだろうか?勝手に想像しては楽しんだ。

ただ肝心の展示の方は見てガッカリ、展示数が圧倒的に少なかったのであっという間に終わってしまった。お目当てのターナーは数点、コンスタブルに至っては油絵が2点のみと貧弱だった。代わりに光をモチーフにした近代オブジェがあったが、例によって芸術性を全く感じない代物で素通りした。

 ロンドンのテートギャラリーには、有名な「オフィーリア」など今回来ていない作品が沢山あるやに聞いている。もうちょっと出して欲しかったというのが正直な気持ちである。ともあれ、日本でもスマホの写真撮影がOKになった事を知ったり、芸術に触れるとやはり一日が豊かになるなど、実り多き秋の一日になった。

Tuesday, 12 September 2023

ジャニーズの性的虐待

児童の性的虐待といえば、今は何と言ってもジャニーズだろう。詳しい事は知らないが、BBCの報道などを読むと本当に心が痛む。20年以上前から最高裁でも取り上げられた問題だと聞く。もっと早く向い合えば、どんなに多くの子供たちが助かっただろうと残念だ。

大人たち、取り分けマスコミには強い怒りを感じる。いけない事は分かっていても商売優先で看過して来たのは、ビックモーターと保険会社の関係と全く同じである。

 この問題はジャニーズに限らず、世界的に慢性化しているから質が悪い。シドニー・シャルダンの「Memories of Midnight」に出て来るモデルのケニーは、8歳の時に叔父から被害を受けた。以来夜になると電気なしでは眠れなくなり、結婚はしても肉体関係は拒否した。 

 「ミレニアム」でも若い女性が次々と失踪する。ドラゴンタツーの女が事件を追う内に、一枚の写真に写っていた少女の怯えた視線から犯人は叔父と突き止める。彼女もその被害者の一人だったが、身内から逃げるのがどんなに大変だったかが伺える。 

 そんな被害に逢った女の復讐劇が、クリント・イーストウッドの「ダーティーハリー」である。若い時にレイプされた女性が、成人して加害者の男を次々に殺害する話である。被害者の特徴は陰部を撃たれた形跡があった事から、事件が遺恨がらみの女と分かった。中々真似出来る事ではないけど。

ただ子供の中にはプラスマイナスプラスと受け止める人もいる。BBCでもその一人が紹介されていた。先のシドニー・シェルダンの小説でも、神父と寝る少年は路上生活から抜け出て生活の糧と割り切っていた。人によって受け止め方が違うだけに問題は複雑である。

Wednesday, 6 September 2023

告解の漏洩

社会に出て最初に困ったことの一つに、悪いニュースの伝え方があった。上司に「間違ってしまいました!」と云うと怒られるのに決まっている。だからと言って隠す訳には行かない。今から思えば、予め解決策を用意してセットで持っていけば良かった。ただ当時はそんな技を知る由もなく、馬鹿正直だけでは世間を渡れないと知った。

処で教会には「告解」がある。過ちを告白して罪を赦してもらう儀式である。私はキリスト教の信者ではないから試したことはないが、知人によると告解をすると気が楽になるらしい。 その告解の内容が外に漏れる事もある。神父も人間だから一人心の中で閉まっておけないのだろう。

シドニー・シェルダンの「Memories of Midnight(真夜中の記憶)」では、若い弁護士が外部からの圧力に屈し死刑判決を出したことを後悔し、「自分は殺人を犯した」と告解する件が出て来る。そして神父は我慢出来ずにその話を外に漏らしてしまう。すると若い弁護士は闇の世界に消されてしまうのであった。 

告解はフレデリック・フォーサイスの「オデッサファイル」でも出て来た。死の床に就いた女性はナチの逃亡者リストの場所を知っていた。神父に化けたモサドが近寄り、告解して罪を償うように諭す。女性は全てを語り、モサドはファイルを手に入れるのであった。

ところで先のシドニー・シェルダンの小説で、神父が漏らした相手は同性愛でベットを共にした少年であった。少年はカネ欲しさにその情報を売ろうとして発覚した。暫く前にカソリック教会の性的虐待も話題になった事を思い出し、さらりと物語に取り入れた著者のリアルさが凄かった。