随分前にルーマニアを旅した時、首都のブカレストは治安が悪いので気を付けろと言われた。原因はストリートチルドレンと云われる孤児であった。チャウシスクの時代に出生率を高めようと、中絶・避妊を禁止した結果、急増した子供達であった。
彼らは初め孤児院に入れられたが、チャウシスク時代が終わると路上に溢れマンホールなどで生活していた。その子供たちがその後どうなったか知る由もないが、子供の頃の記憶はトラウマになるから、社会の不安定要因になっているのだろう。
そんな事を思い出したのが、シドニー・シェルダンの「Angel Of The Dark」であった。物語は金持ちの男が次々と殺害されるが、妻は暫くして姿を消す奇妙な事件だった。残された多額の財産も、妻は孤児院に寄付するのでカネ目的の事件とは思われなかった。
やがて犯人が捕まるのだが、彼の動機は子供時代に父親から捨てられた恨みだった。彼はその復讐に、孤児院時代に知り合った女を金持ちの元に嫁がせ、入念に殺害の準備に入るのであった。
シドニー・シェルダンの小説は途中までとても面白いのだが、オチが今一である。今回も実際そこまでするか?と思う節があったが、ユダヤ人の描く人間関係は相変わらず蘞(えぐ)かった。
同じパターンの殺害をアメリカ、英国、フランス、香港、インドで繰り返す。そんな展開は欧米人にしか書けないスケールがある。