Wednesday, 26 July 2023

イラク人恐怖の里帰り

今から40年程前になるが、フィリッピンのアキノ氏が帰国すると、空港で射殺される事件があった。ロシアでも昨年、野党の指導者ナワリヌイ氏が帰国すると、毒殺未遂事件が起きた。どちらも身の危険を冒してまでも帰国する理由があったのだろうが、リスクは大きかった。

そんな大物でなくても、今ロシアから脱出している人々も同じである。既に100万人を超えたと云うが、将来帰国すると何が待っているか分からない。 

心配するきっかけは、ジェフリー・アーチャーの短編集「12のごまかし(Twelve Red Herrings)」の中に出て来る「何もするな(Do Not Pass Go)」という短編であった。

 それはフセイン政権下で体制派だった男の話である。彼は身の危険を察してアメリカに亡命した。暫くして彼は絨毯の商売を始め、時々トルコに買い付けに出かけるのであった。処がある時、イスタンブールからの飛行機がエンジントラブルでバグダットに緊急着陸してしまう。もしも身元がバレれば男は逮捕、拷問、処刑が待っている事を機長に告げる。機長は機転を効かし、男にパイロットの制服を着せ難を逃れるのであった。

 当人でなければ分からない恐怖感が伝わってきて面白かった。因みにタイトルの「赤いニシン」の意味は犬の訓練用の魚から転じて「ごまかし」の意味という。これを機会に覚えたが、他にも女が宝石を半値で買う方法や、保険金詐欺の話など英国人らしい一冊だった。

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