Tuesday, 27 June 2023

タイタニック探索の事故

先週、タイタニック号の探索ツアーに行った小型潜航艇(タイタン)の事故があった。一時は酸素の残り時間との闘いと思われたが、原因は意外にも爆縮だった。爆縮の英語「Implosion」もこれをきっかけに覚えた。4000mの海底で圧し潰される事を想像しただけで恐ろしい。

それにしても既に300回ほどもの潜航実績もあったのに、今回どうして事故が起きたのだろう?タイタニック号ミステリーにまた一つ謎が増えた。

 今から100年以上前に沈没した船が、未だに脚光を浴びている。それを支えるのが、タイタニック号のテーマパークである。ベルファーストの造船所跡は未だに保存されているが、10年ぐらい前に隣に立派な博物館が出来た。アイルランドの国威発揚なのか、「船を造ったのはアイルランド人だが、運航したのは英国人だ」と書いた土産物も売っている。

 中に入ると、自動カーに乗って1900年初頭の様子を彷彿とさせるアトラクションや、逸話の展示も豊富であった。例えば生存者の男が第一次大戦の終戦前日に戦死したとか、女に紛れて救命ボートに乗って助かった男が、1929年の恐慌で拳銃自殺を遂げたとか。アメリカの富豪が多く乗っていたので、話題は尽きないようだ。

調べてみたら、アメリカのミズリー州とテネシー州にもタイタニック博物館があった。Youtubeで見たら、スミス船長そっくりさんがリアルに当時を語っていた。何かの時に訪れてみたい。

Wednesday, 21 June 2023

落合シェフのイタリアン

先日車の中でラジオを聴いていると、落合シェフの対談が流れていた。イタリア料理界の巨匠が、視聴者の素朴な質問に丁寧に受け応えしていた。そのタッチが快かった。

知らなかったが、カルパッチョと言えば牛肉を使うのが本場イタリアだが、彼が魚貝を使ってみて初めてメニューになった。今では何処のイタリアンでもそれが定番になっているが、元祖は落合さんだったのだ。 

 話を聴いている内に一度店に行ってみたくなった。中々電話が通じなかったが、やっと予約が取れたのでランチを兼ねて行ってみた。銀座の店は開店前から予約客が路上に溢れていた。

其の日は普通の三倍もあるサーモンの前菜から始まり、ズワイガニとカラスミのスパゲッティ、最後はポークのソテーでとても美味しかった。連れのオードブルやウニのパスタも量も半端でなく、お腹いっぱいになった。そしてこれだけ食べてたったの3000円!これにも驚いた。 

安くて美味しい店に出会うと得したような気分になる。何より一日が幸せ感に浸るのがいい。グルメを追及するとキリがない。だから今まで敢えて避けてきた。ただこんな気分になるなら「もうそろそろいいかな?」と思える今日この頃である。早速「ミシュランガイド2023」も求めた。暫くは食の探索で、毎日の彩りを深めようという気になった。

Monday, 19 June 2023

村上春樹考

先日TVを見ていたら、早稲田大キャンパス内にある村上春樹ライブラリーを紹介していた。毎年ノーベル賞候補に名前が上がるのは知っていたが、ここまで若い層に根付いていたのに驚いた。 

彼の本は昔一度だけちょっと齧った事があった。ただ数頁進む内に「これって俺のジャンルじゃないな!」と思って止めた。以来あえて避けていたが、「早稲田でも支持されているなら、今更だけど読んでみるか?」という気になった。

凡そ買う積もりもないので、知人に古本を借りた。有名な「1Q84」、「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の旅」そして「海辺のカフカ」と。立て続けに多少流し読みで、文章は平らだからどれも一日で読めた。処が相変わらず物語にストーリー性がないのが気になった。只管少年の話を聞く相談所の職員になったよう気分で、読んでいてイライラ感も募った。

実はそこがポイントで、友人は「その文章を味わうのが面白んだよ!」と窘められた。世間で評価されているのはその禅問答で、もどかしさがいいらしい。

 話はちょっとズレるが、日本の人口は1億人以上、GDPも世界三位と内需が大きいからあえて海外に出て行かなくても食べていける。若い人はそれに敏感で、だからどうしても内向きになって行く。村上作品はその層を上手く掴んでいる気がする。だけど登場人物の男も女も全く生気がない。特にしばしば出て来る性的描写は、極めて動物的で不快なのはどうしてなのだろう? 

 村上作品のタイトルは、ノルウェー、カフカ、レキシントンなど外国をモチーフにしているのが多い。1Q84に至ってはジョージ・オーエルとは全く関係ない女殺人者の話である。海外の人から見るとその辺の違和感がないのだろうか?

中々ノーベル賞に辿り着かない訳も何かあるのかも知れない。それにしても早稲田と云うと昔は硬派の塊みたいな人が多かったが、最近は随分と変わってしまった。

Monday, 12 June 2023

加藤選手とクレーム

全仏オープンテニスで、加藤未唯選手が話題になっている。女子ダブルスで失格したかと思うと、ミックスダブルスで見事に優勝を果たした。特にミックスダブルスでは、ボレーが良く決まりストロークも腕が振れていた。何かが吹っ切れたのかも知れない。

その女子ダブルスでは、ボールガールへの返球が直撃して女の子が泣き出した。普通はフォアハンドで返す処、試し打ちの感覚でバックハンドで返したのが災いした。一時はレフリーの警告で終わろとしたが、対戦相手のスペイン選手の抗議が続き、結局スーパーバイザーが失格の判断を下した。沢松奈生子も言っていたが、「スペイン選手がここぞとばかりスイッチを入れた」ようだ。

 この事件について、日本のマスコミは「失格は厳し過ぎる」と彼女に同情的な報道が多った。もしもボールガールが直ぐに泣き止んだら、多分状況は違っていたからだ。その意味でジャッジは場の雰囲気に流され易いのは否めない。「人心を味方に付けるのも強さの一つ」と改めて思った。 

 彼女も含めて日本人は言葉にハンディーがある。特に場所はフランスである。彼女がミックスダブルスで優勝した時、紙を見てクレーム分を読んでいたが、それも英語の棒読みだった。せめて自分の言葉で語って欲しかった。本当は拙くてもいいからフランス語がベストだった。スペイン選手がクレームで何語を使ったのは分からないが、きっとその辺の呼吸はお手の物だったのだろう。 

 言葉は大事である。フェデラーの人気の一つは三か国語を流暢に話せる事だった。大坂なおみの武器もネイティブな英語だった。強さも然る事ながら、言葉はヒトの心を掴むから。

Saturday, 10 June 2023

日銀の評価損

株価が上がり続けている。日経平均も3万円を超え、バブル以降の最高値を更新している。実感と随分とかけ離れているだけに何か気持ち悪い。 

株価を押し上げているのは外人買いという。堅調な企業業績と株価の割安感で見直しが入ったという。先日投資の神様のバフェットが、日本の商社株などに言及したのも大きい。確かにこの円安だから、ドルベースにすると相当の割安感があるのだろう。それにしてもどこまで今の上昇が続くのだろう?

心配なのは突然のバブル崩壊ある。ウクライナなどの国際情勢も然る事ながら、やはり国内の金融政策の転換が気になる。日銀総裁の交代で現実味がグッと増してきた。金利が上がれば当然ドル安になるから、外国人投資家は売り株価の下落が始まる。

 何より恐ろしいのは、日銀の抱える国債の評価損である。一説には1%の金利上昇で28兆円の含み損が出ると言われている。当然利払いも増える。0.25%の金利上昇で1.3兆円の利払い増と云うので、12兆円の自己資金は一挙に枯渇し債務超過になるらしい。先日アメリカのデフォルト回避が話題になったが、対岸の火事どころではない。

 よく「日本の国債は対外債務がないから大丈夫」とか「個人資産の2000兆円と国債残高の1000兆円は相殺できる」なんて乱暴な事をいう人がいる。ただそうなれば年金は無くなるし医療保険も効かなくなり、国民生活は大混乱するのは必至である。いつまでも国債や株を買い続けるのは不可能だし、かと云って金利は上げられない。そのジレンマをどう解決するのか?とても他人事ではない。

Wednesday, 7 June 2023

ナヴァロンの嵐のロケ地

ウクライナでダムが決壊し大洪水になっている。戦争とはいえ、ロシアの追い詰められ手段を選ばない姿が見えてくる。ただダムはそう簡単には壊れないとも識者は言う。

思い出すのは映画「ナヴァロンの嵐(Force 10 From Navarone)」である。
連合軍が旧ユーゴスラビアのダムを爆破し、水の力でドイツの侵入を防ぐ話である。若き日のハリソン・フォードも登場し、パルチザンとチェトニックの抗争など面白い作品だった。 

 ただ此方はアリステラ・マクリーンのフィクションである。彼の想像力には予々感心するが、その時もダムは最初の爆破ではびくともしなかった。ただ時間が経つにつれ、水圧で徐々にヒビが入り最後は決壊したのであった。 

 映画のロケに使われたダムは見た事がないが、何年か前にバルカン半島を旅した時、その決壊で流された橋を通った事がある。 

 その日はノーベル賞の「ドリナの橋」で有名なボツニア・ヘルツゴビナので町を出発し、一路アドリア海を目指して南下した。モンテネグロに入り暫くすると、物凄い長さと高さの橋に出会った。それがタラ川に架かるDjudjevic 橋だった。全長365m高さ170mもあり、映画に出てきた橋だった。 

橋は戦前に出来たというから驚きだ。戦時中に設計に携わったエンジニアがそれを破壊しようとした。後にそれが判明しイタリア軍にその橋で殺害された逸話もある。今ではバンジージャンプのメッカになっているらしいが、渡り終え下を見てゾッとした記憶がある。

Monday, 5 June 2023

2022年のエドガー賞

昨年度のアメリカミステリー作家賞(エドガー賞)に選ばれたジェイムズ・ケストレルの「真珠湾の冬(Five Decembers)」は大変面白い小説だ。

物語はホノルルの刑事が太平洋戦争に前後して殺人事件を追う話である。舞台はハワイから香港、日本へと移り、主人公も時代に翻弄されながら、最後は本懐を全うするのであった。 

 日本人として親しみを感じるのは、彼は戦時中の4年間を東京で保護され生き延びた事だった。本当に当時そんな事が出来たのだろうか?と思う節もあるが、流れが自然なので許してしまう。昔何かの本で、東京にいたアメリカ人捕虜がB29の落とす爆弾を見上げていた話を思い出した。

戦争が終わると横浜からミズーリで帰国する件や、野沢温泉まで旧知の女性を慕って行くシーンは、何とも当時を彷彿とさせノスタルジックであった。勿論主人公の真摯な女性関係が、作品をよりウェットにしたのは言うまでも無い。