Tuesday, 4 April 2023

血縁とカネ

毎日ワイドショーで欠かさず出て来るのが、窃盗・殺人である。殆どの動機がカネに絡んでいる。本人の持ち金が尽きたケースから、借金の返済まで様々だ。僅かばかりのカネ目当てで人まで殺めてしまうのは本当に馬鹿げている。洋の東西を問わず、カネは人をメクラにする。

シドニー・シェルダンの「Bloodline(血族)」という随分昔の本があった。浪費家の妻を持った議員がカネに困り、殺人を犯してしまう話である。

彼は世界的製薬会社のファミリー株主であった。日常の資金繰りに困り、思いついたのは持ち株の公開だった。同族が経営する会社の株を売れば大金が入ってくる。その為に公開など毛頭考えていない従弟の経営者を抹殺するのであった。賛同したのはやはり従妹の旦那だった。彼はスキーのインストラクターだったが、カネ目的で一族の娘と結婚した男だった。 

結局事件は失敗に終わるのだが、その華麗なる一族がとてもユニークだった。先代はポーランドのユダヤ人で、子供5人を米、英、独、仏、伊に散らせた。あれ?どこかで聞いたことがあるなと、思い出しのはロスチャイルド一族だった。此方もドイツで生まれたユダヤ人が、息子5人を独、英、伊、仏、墺の5か国に分散させて発展を遂げた。これはひょっとしてそのパクリかと思ったが、小説はとてもよく書けていた。

先の2人の犯人は英国とドイツに渡った末裔であった。会社を引き継いだのはアメリカに渡った長男とその娘で堅実な血族だった。フランスに渡った娘は資産に恵まれプロドライバーになっていたり、イタリアの末裔は妻と愛人にそれぞれ3人づつの子供を設けるドンファンと、お国柄も反映していた。 

ところで小説の中に先代のユダヤ人がゲットーから抜け出すと、「シレジア(Silesia)に送られてしまう!」というセリフがあった。今のシレジアはポーランドの南部でチェコ国境の辺りである。所謂炭鉱地帯だが、以前旅した時は全くそんな僻地には見えなかった。ただ当時は正にシベリアみたいな場所だったみたいで、その理由がやけに気になったりした。

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