Thursday, 12 January 2023

東野圭吾の本

街を歩いていると、若い人の服装が気になる。男も女も同じような色彩で、地味で安っぽい。特に今時の女性でハイヒールを履く人は皆無で、ズックみたいな靴が一層貧祖に映る。これも彼是30年は続いているデフレが成せる業か、将又男女差の敷居が低くなりつつある社会現象か、昔を知る者にとっては嘆かわしいの一語である。

 そんな矢先、若い人に人気のある東野圭吾を始めて読んでみた。今まであえて読まなかったのは、大衆的で内向きな処が何か赤川次郎に似ていて、俺のジャンルではないと思っていたからだ。手にしたのは20年以上前に出た「秘密」であった。

物語は交通事故に遭った親子が入れ替わる話であった。生き残った娘は話してみると実は死んだはずの妻だったり、その稚拙な設定からして一体何が面白いのかさっぱり分からなかった。とても最後まで我慢出来ずに途中で止めてしまった。

 同じようなタッチは、百田尚樹の「プリズム」にもあった。此方も20年ほど前の作品だが、多重人格の男に人妻が惹かれる話であった。百田氏の歴史ものは歯切れが良くファンの一人だが、こういった陰湿的なタッチはあまり冴えがない。そもそも家庭教師で通い始めた家の、居候と懇意になるストーリーも気持ち悪かった。

 デフレが長引き所得が伸びないと、若い人の心が停滞するのもよく分かる。20歳代でデフレを体験し始めた人は、もう50歳代になっているから恐ろしい。加えてこの何年はコロナで他人との距離が広がっている。その閉塞感はもはや日常化していて、見ていて本当に気の毒だ。先程の小説が受けるのも、こうした社会を投影しているからだろう。

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