Thursday, 29 December 2022

下級武士の話

百田尚樹の「影法師」は、流石ベストセラー作家だけあって、読み出したら止まらなかった。物語は江戸末期に下級武士が出世する話である。剣の道や武士の想いなど、「永遠の0」のような伏線が巧みで唸らせた。特に面白かったのは、当時の武家社会の実態であった。

例えば藩校、本来は上級武士の為の学校であったようだ。そこに主人公の下級武士が特別に入学したので虐めに遭った。また主人公が娶ったのは使用人の娘、つまり下女であった。下女から直接武士の嫁にはなれないので、書類上一度他の武士に養女として出された。婚姻は上級武士は上級武士同志、中級・下級との縁組はなかったようだし、次男に生まれると婿に出なくてはならないし、それが叶わないと居候として暮らす運命だった。 

そんな事で思い出したのが福沢諭吉である。彼が生まれたのも、中津藩の下級藩士の家だったからだ。よく「門閥制度は親の仇でござる」と口にしていたのは有名な話だが、時代が時代でなかったら、彼もその中で終わっていた。

今年は「学問のすゝめ」の刊行から150周年という。有名な「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと云えり」の件は勇気を与えてくれる。今に通じる名言も多く、例えば「顔色容貌を快くして、一見直ちに人に厭わるる事無きを要す」は、人は第一印象が大事だから容姿には気を付けろ!だし、「一身独立して一国独立する」も正にその通りである。

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