Friday, 26 August 2022

ガリツィアのユダヤ人

行った事もないウクライナのガリツィアだが、バルザックが遥々パリから文通相手の婦人に会いに行った土地と知って以来、気になっていた。先日本屋に行くと、「ガリツィアのユダヤ人」というタイトルの本が目に留まった。

早速読んでみると、著者は一ツ橋を出た金沢大の先生だった。ガリツィアは元ポーランド領だったが、今は西ウクライナに属する地域で名前も消えている。そこにやはり消えてしまったユダヤ人の研究をしていて、そのマイナーさに変わった人がいるもんだと思った。ただそれは田澤耕氏のカタルーニャ語のような独創性もあって、ついつい引き込まれてしまうのであった。 
 
氏は「隣人が敵国人になる日」も出していた。言わずとポーランド人とウクライナ人の反目である。それに少数民族のユダヤ人が絡むのだが、改めてこの辺りは、昔から争いが絶えない血生臭い土地だと教えてくれるのであった。

ところでゼレンスキー大統領もユダヤ人と聞く。彼は東ウクライナの生まれである。ガリツィアにも現在7万人位のユダヤ人が残っているというが、著者によれば昔からいたユダヤ人はアメリカなどに出て行って、今いる人はロシアから入って来た人だという。だから彼のルーツも同じような経路を辿っているのかも知れない。

いずれにしても、日本と違って大陸に住むと大国のパワーバランスに振り回せれるから怖い。ガリツィアからポーランド人が出て行ったのも、ドイツが敗北した玉突きだった。島国の日本にいると、こうした感覚が中々分からない。

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