Sunday, 12 June 2022

プーチンとピョートル

今年はロシアの大帝ピョートルの生誕350年という。プーチンはその祝賀行事で彼の栄光を称えていた。特にスウェーデンに勝利した話を引き合いに出していた。ウクライナに準えたのだろうか、何か時代錯誤の感は拭えない。

そのピョートルだが、随分前に読んだアンリ・トロワイヤの「大帝ピョートル」は中々いい本だった。工藤康子氏の翻訳も素晴らしいし、彼と彼女の三部作「女帝エカテリーナ」と「イヴァン雷帝」も傑作であった。 

ピョートルは戦略に長けていただけでなく、欧州のシステムを積極的に取り入れた。例えば外国人士官の登用、当時の将軍の半分は外人だったり、文官、武官、宮内官を12の階級に整理した官等表を作り役所の風通しを良くした。

フィスカルと呼ぶ行政監督制度もあった。500人の監督官が腐敗した裁判官や汚職官吏の摘発に励んだ。所謂スパイの先駆けである。この辺がプーチンが慕う理由の一つかも知れないが、ロシアらしかったのは、監督官が課した罰金を国と本人で折半した事である。当然それがまた腐敗を生んだので、制度は廃止になったという。

ピョートルの私生活も波乱に富んでいた。結婚はしていたが、ラトビアの田舎で部下が拾った17歳の少女を洗濯女として身近に置いた。それが後の皇后エリザヴェータであった。ただ一人息子はひ弱で父の期待に沿えなかった。挙句は父に反旗を翻したため、父は死刑を告げるなど、かつてのイワン雷帝と同じ運命を辿るのであった。

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