ただ精一杯想像力を働かせると、いくつかの点が見えて来る。例えば彼はよく「ネオナチとの闘い」という言葉を使う。今時ナチもあったものではないと思ってしまうが、それは嘗てのソ連が味わった苦い経験と関係している気がする。
第二次大戦が始まった時、ドイツはソ連の衛星国に侵攻した。例えばバルト三国では、今までソ連に忠実だったバルトの人が、ドイツ軍を解放者だと思ってドイツ側に付いた。以前ラトビアのリガの博物館に行った時、その様子を描いた絵画を見て分かった。人々はドイツ軍に入り、昨日までの君主に銃を向けたのであった。ところが戦争が終わってドイツが敗れると、またソ連が戻って来た。当然ドイツ側に立って戦った人々は粛清され多くの命が失われた。プーチンがネオナチと呼んでいるのは、この西側シンパである。
もう一つは点在するロシア人の存在である。例えばエストニアの場合、今でも人口130万人の内40万人はロシア語を母国語にしている。ラトビアはもっと多く、180万人の内70万人近い人がロシア語で話している。彼らはソ連が崩壊した後、ソ連(ロシア)に帰るに帰れなかった人達である。
残された人たちはある日突然、ロシア語から現地語が義務付けられた。それによって就業の機会を無くし、多くの人が無国籍者としてパスポートを取り上げられた。思えばあれから33年、あの時生まれた人が社会の中核になっている。そんな梯子を外された親の時代を恨むのは当然であろう。ウクライナ東部の親ロシア派という人達も、多分こういった変遷を経てた人だと思う。旧ソ連圏に残るロシア人の不満が、プーチンを支えている。
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