Wednesday, 16 March 2022

歌はチカラ

ウクライナ支援が世界で起きている。その一つが音楽である。NYのメトロポリタン歌劇場で行われた支援のコンサートをYoutube で見た。特に国歌の合唱には心が揺さぶられた。遥か地球の裏側からのメッセージは大きな力になったに違いない。流石アメリカは移民の国、1百万人のウクライナ系市民がいるという。 

キエフの路上でオーケストラの楽員が、戦火の合間を縫って奏でた光景も印象的だった。爆撃と恐怖で心が折れそうになっている時に、生の音楽に勇気付けられる人々の気持ちが伝わってきた。

こうして音楽の力に触れるにつけ、今まで少し鈍感だったと反省している。その典型的なのがエストニアの歌謡祭である。ソ連時代から今に続く国民的行事として、民族のアイデンティティを確認する祭典である。 

何年か前に聴きに行ったが、それは夏の炎天下に野外のドームで行われた。行くと民族衣装に身を包んだ子供から年寄りまで、大勢の参加者が集まっていて、その色彩に魅了された。特に若い女性のブロンズと赤い衣装のコントラストが美しく、写真に収めるのが忙しかった。

ところが肝心の音楽はというと、聞き慣れぬフォークソングが延々と続き、正直途中で飽きてしまった。夏の日差しも強かったので、上半身裸で日光浴を兼ねて聞いていると、後ろのおばさんから「服を着なさい」と注意されてしまった。思っていた以上に神聖な場所だとその時思った。

エストニアの人口は130万人だが、ロシア人が50万人いるので、生粋のエストニア人は80万人しかいない。今回のウクライナどころか、ロシアが国境を越えて来られたらイチコロの民族である。

メトロポリタンの支配人が「オペラは音楽の兵士であり武器になる」と語っていた。こうして戦闘と廃墟の中で初めて音楽の力を実感した次第だが、エストニアの時は何も分かっていなかったのだ。

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