思い出すのはソ連時代の強制退去である。バルト三国や東欧では、ソ連軍がやって来ると、ある時突然にドアをノックされた。兵士から「1時間以内に支度して出るように!」と告げられ、住居はロシア人に取られた。人々はバック一つを持って列車に乗せられた。行く先の多くはシベリアであった。
タリンに住んでいた頃、ある晩眠れなくて近くに飲みに出かけた事があった。パブに入ると多くの人が集まっていた。聞いてみるとその日は独立記念日だった。静かに語り合う姿を見ていると、今の平和を噛み締めているのが伝わってきた。
昔読んだ「脱出記(The Long Walk)」という本がある。シベリアからインドまで、6500kmを徒歩で逃避行した男たちの実話である。何度から読み直したが、その都度勇気を貰う一冊であった。その本の中にバイカル湖近くで一人の少女に出逢うシーンがあった。少女はウクライナ人で、農場を経営していた両親が殺されてシベリアのキャンプに連れて来られた。施設を抜け出した所で一行に出逢うが、体力も尽きて途中で死んでしまった。
何の小説だか忘れたが、やはりシベリアの山奥でエストニア人親子に出逢うシーンも印象的だった。そんな物語がまた始まろうとしているのだろうか。ロシアの無謀な行為に怒りを感じる。
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