例えばエストニア北部のロシア国境にナルバ(Narva)という町がある。丘から見下ろすと、ロシアから出稼ぎに来る車が検問所で列を作っているのが見える。その町の郊外に物凄い数のダーチャが建ち並ぶ森がある。森の先にはバルト海の広大なビーチが広がり、人々はここで夏になると只管陽を浴びるのであった。
ただロシア人が引き揚げてからは、殆どが空き家になっている。訪れた時もその不気味な静けさに怖くなった記憶がある。何より日本と違うのは、レストランや商店が全くない事である。ダーチャはかつては農民の自給自足の耕作地だったように、食糧不足を補う場所でもあったからだ。
人間だからロシア人とて暖かい場所を求めるのは自然である。ただ次第にその限らた場所も西側に行ってしまうと、生存本能が脅かされる気分になるのも分からないではない。一年中寒い土地に暮らすには我慢が要るが、それが過ぎると被害者意識に変る。冬のこの季節、キエフではマイナス3℃だがモスクワは10℃を超えている。侵略は決して許されるものではないものの、そんな人々の心理を思い出したのである。
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