Wednesday, 12 January 2022

嘗てのガリツィア

ロシアがウクライナ国境に軍を集結させている。果たして侵攻は始まるのだろうか?中国もこれを支持しているというので気味が悪い。もしもそれに併せて台湾侵攻があれば、世界規模の戦争になってしまう。まさかとは思うが、暫くはこの2つが大きな関心毎である。

プーチン大統領はNATOの包囲網が迫っていると言っていた。確かに鉄のカーテンがあった頃は東独、チェコやハンガリーが壁になっていたが、今や皆西側になってしまった。4年前にその一つ、ポーランドを一周した時それが良く分かった。首都のワルシャワから東に車を走らせると、もうそこはベラルーシやウクライナの国境だった。 

フレデリック・フォーサイスの「悪魔の選択(The Devil’s Alternative)」を読んでいると、ウクライナも嘗ては西洋の一員だった事が分かる。言語はローマ字だし宗教もロシア正教でなく東方カトリックだったり、何より今の西ウクライナは、嘗てはガリツィア(Galicia)と呼ばれたポーランドの一部だったからだ。
 
随分前にこのブログでも書いたが、バルザックが恋した女性はそのガルツィアに住むポーランド貴族だった。その時はよく理解できなかったが、こうして歴史を紐解くとウクライナに残ったポーランド人の一家だと分かる。

余談だがバルザックはその婦人との遠距離恋愛の末に結婚したが、パリとの片道2000キロに渡る馬車旅行で身体を壊してしまった。おまけに死の床に就いた時に、既に彼女には別の男がいた。その人の好さが、小説「ゴリオ爺さん」とそっくりな気がしている。 

ポーランドのウクライナ国境付近には絶滅収容所やV2のロケット実験場が点在し、旅した時はこの世の果てに見えた。ただその先には肥料をやらなくても穀物が育つ豊かな土地が続くかと思うと、又々旅の郷愁に誘われるのであった。

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