Monday, 26 July 2021

ボブ・ラングレーの山岳小説

往年の名画「黄色いリボン」は、騎兵隊を華やかに描いている。ジョン・ウェン演じる大尉や、ジョアン・ドルー演じる後任の中尉のフィアンセなど、何ともバランスが良く何度見ても飽きない作品である。大尉が最後の仕事を終え去って行く途中、功績が認められ少佐として呼び戻されるオチもいい。一度終わった人生に再登板の声が掛かるのは、サラリーマンなら誰しも共感を呼ぶシーンである。 

こちらも古い本だが、ボブ・ラングレーの小説「オータム・タイガー(Autumn Tiger)」も、そんな退任を目の前にした男がもう一仕事する話である。アメリカの情報局に勤務する主人公は、ある時若い頃に関係した敵のスパイが亡命する作戦に駆り出される。時は第二次大戦の末期、ソ連が英米のベルリン侵攻を邪魔する陽動作戦を立て、アメリカに移送されるドイツ軍捕虜の中にスパイを送り込んだのであった。主人公は最後に昔のスパイの素顔に触れるのであるが、その大胆な発想と壮大な仕掛けに驚かされるのである。それにしても数十年前の過去と向かい合う晩年の出会いは、中々重みがある。

ボブ・ラングレーは有名な山岳小説「北壁の死闘(Traverse of The Gods)」も去る事ながら、最近読んだ「ブリザードの死闘(Avenge The Belgrano)」も素晴らしかった。前者が第二次大戦下のドイツ科学者の救出なら、後者はスコットランドを舞台にしたフォークランド紛争を題材にしている。どちらも岩山での逃避行はスリル満点で、普段ご縁がないアルゼンチン人の国民性にも触れる事が出来た。これから「ランニング・フォックス秘密指令(The War of The Running Fox)」も読んでみようと思っている。

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