Thursday, 22 April 2021

モノクロ映画で旅気分

昔のDVD映画が安く簡単に手に入るので有難い。最近は1940年~50年代のイタリア作品に凝っている。ざっと見た作品を挙げると、「揺れる大地」「苦い米」「神の土地」「子供たちは見ている」「白い酋長」がある。多くが戦後の荒廃した時代のモノクロ映画で、貧しさの中で逞しく生きる姿は、同世代の吉永小百合や浜田光夫に通じるものがある。

兎角イタリア人というと、陽気でいい加減で女の尻ばかり追いかけているイメージがあるが、実は家族的で用心深くで閉鎖的な社会に生きている事が分かる。例えば「子供たちは見ている」は妻の浮気に頭を痛める親子の話だが、夫はその事をアパートの住民に悟られる事を何より恐れていたし、住民も調味料を借りにくる振りをして妻の在宅を確かめていた。また「白い酋長」は田舎からローマに出て来た新婦が役者を追って失踪するコミカルな物語だが、夫は親戚でローマの名門の叔父の家名に泥を塗る事を何より気に掛けていた。誰かが「イタリアサッカーが守り中心なのは、その貧困から来ている」と言っていたが、それに通じるようなものを感じた。そして何よりその光景は日本的で、とても共感を覚えるのであった。 

 映画を見ているとちょっとした旅行気分になってくる。「苦い米」の舞台はミラノ近郊のVercelliで、北に行けばコモ湖などの湖水地方、東はベルガモの処だった。今回のコロナで最も感染者が出た場所だが、水田が続くフラットな地形と関係したのだろうか?「子供たちは見ている」はやはり北イタリアの港町Alassioで、西に車を走らせればサンレモを抜けてフランスのコートダジュール海岸に出る景勝地だった。いつかこのルートを走ってみたいと思っている場所で、華やかさの陰にこんな物語があったのだ。「白い酋長」はローマだが、「神の土地」や「揺れる大地」はシシリー島とその沖合のストロンポリ島だった。この南イタリアは今でも貧しい所だが、旅行者には古代を感じる極めて情緒的な場所に映る。特にシシリー島は今まで旅した中で一番思い出深い場所だった。コロナで海外旅行は当分お預けなので、暫くはこうして楽しんでいる。

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