Saturday, 27 February 2021

一代のSG Warburg

あれは90年代半ばだったか、マーチャントバンクのSG WarburgがスイスのSBCに買収された。それから間もなく、今度は同じスイスの大手UBSが両者を飲み込んだ。英国ビックバンとアメリカ型の投資銀行が台頭した過渡期だったが、ロンドンの老舗が次々と消えていく姿に時代の流れを感じたものだった。

マーチャントバンクと聞くと、マホガニーに囲まれた部屋で高級な背広に身を包んだシティー紳士を連想する。同じくRothschild, Goldman Sachsもそうだが、ドイツ由来の名前は重厚である。銀行なのに預金の窓口もなく、少人数で大きな金を動かすから荘厳な感じがする。若い頃SG Warburgではないが、東京に店を構えるあるマーチャントバンクを訪れ、試しに「預金をしたいのですが?」と聞いてみた。受付の女性はその場違いの客に対し、「1億円(今から思うと1百万ポンド)から受け付けます」とサラリと答えた。以来その実態を殆ど知る由もなかったが、最近Ron Chernow著の大作「ウォーバーク、ユダヤ財閥の興亡」を読み返してみると少し様子が分かって来た。  

まず老舗と思っていたSG Warburgは意外と新しい会社だった。設立されたのは戦後で、創業者のジークムントがヒットラーから逃れてドイツから英国に渡ったのが始まりだった。そんな彼が亡くなると10年程でSBCに吸収されたので、ほぼ一代で終わった事になる。Warburg家はハンブルグの北の町Warburgが発祥の地である。嘗ての朝鮮みたいに、ドイツのユダヤ人は姓名を持てなかったので町の名前を冠したようだ。本格的に両替商としてスタートしたのはハンブルグだったが、それも18世紀半ばだからそんなに古くはない。早い時期にミテルヴェークとアルスターウーファーのWarburg家に枝分かれ、アメリカに渡りFRB創設に携わるポールやドイツ国立銀行のマックスなどを輩出し栄えたのが前者だった。ただSG Warburgのジークムントは後者の出だった。

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