Thursday, 4 February 2021

バトンルージュの町

ジェフリー・アーチャーのクリフトン年代記に、Lady Virginiaという女性が出てくる。彼女は貴族の出だが、カネが無くなると男を見つけて金策に励む性癖があった。ある時、アメリカ人の金持ちと知り合い一晩を共にすると、偽装妊娠を思いついて遥々ロンドンからアメリカまで彼を追いかけた。それも彼の結婚式に紛れ込んで仰天させる作戦に出た。その甲斐あって長年に渡って子供の教育費をせしめる事に成功するのだが、その町の名前がバトンルージュ(Baton Rouge)であった。「赤い杖」を意味する何ともエキゾティックな町の名前は、元スペイン領から来ていた。

そのバトンルージュだが、池上彰さんの本を読んでいたら、日本人高校生の服部君が誤って射殺された街だと分かった。事件は1992年のハロウィンの晩、近所の家をノックすると突然発砲された。犯人は自宅侵入の正当防衛で無罪になり、改めてアメリカの銃社会の常識を痛感したニュースであった。そんな物騒な場所に英国人とは言え、女一人でしかもカネを揺すりに行くなんて尋常ではない。小説でも正体がバレると、慌てて産気付いて退散していた。  

学生の頃アメリカをグレイハウンドで一周した事があった。近くのニューオーリンズに泊まり、夕方一杯飲みに出るとパチオと呼ぶ中庭に店があった。一ドルを出すと女の子がテーブルの上で踊ってくれた。歌劇カルメンに出てくるジプシーのようで、アメリカにあってスペインの風情が残っていたのを思い出した。

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