キヌヒ島の寂寥感は半端ではない。自分だったら気が狂ってしまうかも知れない。そんな中で出会った一人の診療医を思い出した。
Thursday, 17 December 2020
キヒヌ島の出会い
これもBSテレビだが、「心を繋ぐクリスマス」と称してエストニアのキヒヌ島(Kihnu)を紹介していた。縦7㎞、横3㎞の小さな島には600人が住んでいる。住民の織物文化が残っている処から、2003年に世界無形遺産に登録された。島の男は漁に出て島にはいないが、クリスマスには帰ってくるのでその様子を紹介していた。番組の解説によると、織物の基調は赤と黒だと言う。年老いた女性が、「年を取ると色々な事が分かるから黒の割合が多くなるの」と語っていたのが印象的だった。見ていて「あれ?此処って行ったことあった!」事に気付いた。
今から10年ほど前だったか、「地球の歩き方」に載っていたので訪れた。船で揺られること3時間、着いた港には建物すらなかった。港近くで自転車を借りて島を一周することにしたが、森の中に観光センターと称する木造の家が一軒佇む他は何も見当たらない。勿論レストランやキャフェも無ければ人影もない。あるのは点在する農家だけである。そんな中、自転車を漕いで反対側の海を目指した。葦が生い茂る沼地で行き止まりになったので、引き返そうとすると一台の車が止まっていた。見ると近くに女性が歩いていた。30歳半ばのブロンズの人だった。折角なので写真を撮ってもらうことにしてシャッターを頼んだ。「こんな辺鄙な処で何をしているの?」と聞くと、「私は診療医なの、タリン市の病院から派遣されていて駐在しているの」と言う。「こんな島で寂しくないの?」「ええそうよ」と言う。そんな会話をしてその場は別れた。来た道を引き返そうと自転車を漕いでいると、暫くして彼女の車が止まっていた。「やあ!さっきはどうも」と礼を言ったが、何か待っていたような雰囲気を感じた。それから島を一周した。自転車は空気が入っていなかったので重かった。やっとの事で港に近づいた時、ふと近くの岩場に女性が一人、水着姿で日光浴をしているのが見えた。確かにあの女性だった。どうしようかと迷ったが、船の時間も迫っていたので声を掛けることもなく通り過ぎてしまった。
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