Tuesday, 3 November 2020

晩秋の蕎麦

秋も深まり、新そばの季節がやってきた。先日も信州の田舎で、打ち立ての蕎麦を味わった。寒かったので掛け蕎麦にしたが、何とも言えぬ甘さが伝わり美味かった。ただフグ料理もそうだが、味は淡泊だから半分は食感や季節感を楽しんでいるのかも知れない。そんな繊細さを好むのはやはり日本人なのだろう。昔、来日したドイツ人が「蕎麦を食べた事がない」と言うので、蕎麦屋に連れて行った事があった。味のしないジャパニーズヌードルを食べ終わると、キョトンとした顔が達成感の無さを物語っていたのが印象的だった。

その蕎麦に魅せられる人は多い。後輩のY君も自宅に蕎麦打ちセットを買い込み、週末ともなると熱心に打っていた。一度ご馳走してもらったが、中々上手く出来ていた。そんな趣味が高じてその道を歩む人もいた。テニス仲間のSさんは、ある時仕事を投げうって念願の蕎麦屋を開いた。パートナーと称する相方の女性と二人三脚で、朝から仕入れに余念がなかった。店は繁盛したが、いつの間にか忙しくてテニスも止めてしまった。最近は会っていないが、趣味が仕事になって後悔していないか心配だ。 

蕎麦屋はそのシンプルさが何ともいい。東京だと「かんだやぶそば」や「神田まつや」、荻窪の「本村庵」の老舗は気に入っている。掃除の行き届いた店内に入ると背筋が伸びるから不思議だ。「かんだやぶそば」の昔ながらの呼び込みも風流だし、「神田まつや」の卵焼きは絶品だし、「本村庵」の冷酒剣菱が何とも蕎麦に合う。最近では信濃追分の「きこり」や「浅間翁」、中軽井沢の「かぎもとや」に良く足を運んでいる。

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