Friday, 16 October 2020

P.A.サムエルソンの時代

70年代の経済学で、代表的な教科書はP.A.サムエルソンの「経済学(Economics)」だった。赤い表紙の上下二巻に渡るボリュームは、読む前から圧倒された。加えて担任のT先生は原書で読めと言う。ただでさえも難解な世界が、英語になるとチンプンカンプンだった事を思い出す。ところでその翻訳者は一ツ橋の都留重人氏であった。ハーバード大でサムエルソン博士との親交の関係らしいが、最近その都留教授が共産主義者だったと知った。確かに経済学部で近経かマル経を選択した時代だったし、マッカーシー旋風の頃だったから不思議ではないが、近経の著名な先生がマルキストだった事は意外だった。
 
日本学術会議の会員選考で、中国の千人計画に参加した人の疑いが取り沙汰された。本当なら唯識事態である。今の時代でも赤化の誘いは尽きないと改めて諭された。社会主義がいかに非人間的な社会を生むのか、住んでみないと分からない。まず気が付くのが街並みである。巨大なモニュメントと灰色のアパート群、そして青空市場、ただ配給制だから個人の商店街はない。流石最近では新しい店も出来始めたが、昔から続くレストランやパブ、八百屋、魚屋、洋服屋等がない風景は何か寒々しい。何より店員の笑顔である。象徴的なのが年配の給仕に未だに笑顔がない事だ。怖い顔で「何が食べたいんだ?」みたいに聞いてくる。田舎に行っても、分散村と称して家々は離れていて中心地がない。これもコルホーズの名残で、旅行者から見ると拠り所がない殺風景な風景は何とも到達感がない。  

そんな事もあり、あの時日本が日露戦争で負けていたら同じ運命を辿ったかと思うと、東郷元帥や乃木大将が神様に思えるのである。ひょんな事で、赤化の恐怖を思い出した。

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