そう言えば、ビゼーの歌劇「カルメン」もこれをテーマにした作品だった。妻帯者のドンホセがジプシー女のカルメンに魅かれる。カルメンは誘惑しただけだったが、男は本気になってしまう。求愛するドンホセは、カルメンが投げた花を拾って「花の歌」を歌う。一方カルメンは、恋は気まぐれをテーマにした「ハバネラ」で返す。観衆は情緒的な美しい旋律にグッと引き込まれてしまう。二人のすれ違いはエスカレートし、最後は遂にドンホセがカルメンを刺してしまう。その劇的な幕切れも、闘牛士の歌う「トレアドール」をバックに最高潮に達するのである。
それにしてもどちらも同じ殺傷事件なのに、かくも受け止める方の違うのはどうしてなのだろう?芸術性があると感動を呼ぶのは、不謹慎だが事実である。逆に人の手が加わらないと、ただ残虐で非情な行為にしか映らない。何か不公平な気がするが、日頃我々はこうしたトリックの中で生きている事に気付く。
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