今から40年以上前だったか、初めて行ったシンガポールで標語を見て驚いた。それは「水の一滴、血の一滴」だった。シンガポールの水は、当時からマレーシアのジョホールバルから輸入していた。今では安定供給され、WHOの基準でも世界一安全な水と評価されているが、当時は供給が不安定だった。
水は大事である。中国でも「黄河を制するものが国を制する」と宮脇淳子さんの本に書いてあった。あの黒ビールのギネスが成功したのも、水利権を得たからだ。年間45ポンドの9000年リースは有名な話である。ウィックロー山地から流れる水を、永遠にタダ同然で確保したのが成功の秘訣だった。水利権は時によって紛争のタネにもなる。最近でもナイル川を巡る対立で、上流にダムを持つエチオピアと、下流で水を待つエジプトとスーダンが対立している。ダムで水を貯えたい一方、砂漠で水を待つ方は死活問題である。
今一番気がかりなのは、中国の三峡ダムの水位である。三峡ダムは揚子江に注ぐ世界最大のダムである。長期の大雨で水位が上がり、暫く前から制限水位を超えている。放水が続いているが、もしも決壊すれば4億人の生活に影響するというので、国体をも揺るがし兼ねない事態になる。ソ連の社会主義はチェルノブイイの事故で瓦解した。敵は思わぬ所に潜んでいると思ったが、今回の自然災害もそれに似た側面を持っているので目が離せない。
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