Monday, 10 August 2020

女は魔物

大学4年生の頃だったか、松本清張の「点と線」を読んだ。夜を徹して結末に近づいたのは未明だった。最後に犯人が明らかになった時、それが女だと分かってぞっとした記憶がある。すっかり主人公の男が犯人だと思っていただけに意外だった。それまで女(の子)は清純で笑顔が美しいと思っていたが、依頼、女は魔物で怖いという観念がどこかに住み込んだ。

その「点と線」だが、久々に読み返してみた。有名な4分間のアリバイ作りも去る事ながら、病床の妻が夫の愛人のカネまで工面し、最後は2人を殺してしまうストーリーが凄かった。堀辰雄の小説「菜緒子」も別居の夫婦をテーマにしていたが、こちらはもっと詩的で刹那的だった。今風に言うなら、調子に乗って遊んでいるうちに、長年の妻の憎悪と執念が爆発したという処だろう。

夫婦の関係は微妙なバランスの上で成り立っている。同じ浮気でも、東出昌大と杏みたいに離婚に至る事もあれば、中村橋之助と三田寛子のように許してもらえるケースもある。寛容な妻かと思っていると大間違いで、本心はどう思っているのか分からない。用心に越したことはない。

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