毎日のように出てくる芸能人の不倫と浮気のニュース、今週もアンジャッシュの渡部健さんの不徳が発覚した。あまりテレビは見ないし、若い芸能人の名前も知らないので、普段は殆ど関心がない。ただ若くして結婚すると恋愛願望は中々捨てきれないようだし、芸能界は誘惑も多いから分かる気もする。浮気がバレると当事者の反省が始まる。誘った男も悪いが、付いていった女も責任があったりなかったり。結婚後に変わり果てた奥さんにも原因があったり、反省会は三者三様の体を為すのが世の常である。
古い映画だが、芥川龍之介の「羅生門」はそれを如実に語っている。時は平安時代、三船一郎演じる浪人が通りかかった公家女に一目ぼれして、亭主を殺害してしまう。浪人は女から「私を取るなら決闘して欲しい」と言われたので、果し合いをしたと言う。ところが女の証言だと、辱めを受るのを見ていた亭主の視線に堪え切れす、殺したのは自分だという。一方死んだ亭主の亡霊は、女房が奪われるのを見ていて耐え切れず自刃したという。聞いていた代官は何が何だか全く分からない。
「羅生門」の小説の方は、映画とは違って随分と短い。朽ち果てた羅生門には死体が放置されていて、その死体からか髪の毛を奪うお婆の話である。そのお婆を男が諭している内に、最後は本性が出て、男はお婆の着物を奪って逃げるのであった。映画も小説も人間の心の底に流れるエゴを描いている。不倫や浮気とは言え、当事者が語りだすと今まで聞いた事のない本音が出てくる。知れば知るほど実に恐ろしや、惚れた腫れたの世界から、人間の欲深い性に出会うのである。浮気の亭主は奥さんになった女の性を、奥さんは亭主の結婚前の言葉を、浮気の相手は男の甲斐を、それぞれ疑うのである。
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