Saturday, 23 May 2020

オスマン帝国の本

暫く前に、中公新書の小笠原弘幸著「オスマン帝国」を読んだ。オスマンの歴史は、多くのスルタンが登場するが、馴染みのない名前が中々頭に入らない。この本も例外でなく、年表を読まされているような気分になってしまった。興味が湧かない理由の一つが、オスマン帝国と現在のトルコがあまり関係ないことにある。どうしても現在との接点で歴史を振り返ろうとする者にとっては、きっかけが掴めない。ともあれ登場人物は男ばかりで女が皆無の歴史、兄弟殺しや鳥籠と称する隔離、イェニチェリと称する軍団など陰湿で残虐なイメージが付きまとう。



そのオスマン帝国だが、バルカン半島を旅すると当時の面影が沢山残っていたので、少しは親近感がある。セルビアのニシュという町には、ドクロ塔と称してオスマン軍がセルビア兵士の生首を埋め込んだ塔が現存していたり、露土戦争の激戦地だったブルガリアのシプカ峠では、山頂に陣取るオスマン軍に対し、登ってくるロシア兵士の様子が再現されていて生々しかった。またやはりブルガリア南部のプロヴィデフという町は、今のトルコ国境まで200Kmの処だったこともあり、退路の確保跡が残っていて空想を掻き立てられた。

またルーマニアの田舎では、捕虜になったオスマン兵の悲惨な逸話に触れたり、ハンガリーのブタペストには150年も統治したグル・ババの霊廊に寄った。そう言えばスペインの建築の半分はイスラム様式だった。今やトルコがEUに入ろうかという時代である。入れない理由の一つが死刑制度だという。かつての栄光がまだトルコ人の血に流れているのだろう。

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