吉田類の酒場放浪記は、昔から好きな番組の一つである。初めての居酒屋に入り、酒を注文するだけだが、不思議と哀愁に誘われ自分も同席しているような気分になる。やはり酒場詩人ならではの為せる技である。
暫く前に高尾に墓参りに行った帰り、駅近くの寿司屋に寄った。カウンターで飲んでいると、その吉田さんの色紙が目に留まった。主人に、「ここにも取材があったの?」と聞くと、「いや、プラーベートで来られた時の物です」と言う。どうやら近くの高尾山に登った帰りに、山仲間と立ち寄ったらしい。普段のイメージから想像出来ないが、意外にも運動家だった。その寿司屋でも彼はよく飲んだらしく、主人が「あの人は強いわ!」と感心していた。確かに番組が17年も続いている事を思うと、酒が本当に好きなようだ。
その酒場放浪記だが、何年か前に恵比寿の「ふくみ」という店が登場した。いつか行ってみたいと思っていたが、近くて遠い恵比寿は中々途中下車する機会に恵まれなかった。ところが最近、そのチャンスが巡ってきて、遂に暖簾をくぐる日がやって来た。店は地下一階にあり、愛想のいいおばさんに挨拶代わりにその旨を伝えると、「今座っている席に吉田さんも座っていたのよ!」と教えてくれた。酒の種類はとても豊富で、見た事のない銘柄に番組が選んだ理由も頷けた。その日は結局、岩手のタクシードライーバー、兵庫の奥播磨、そして三重の作を一合づつ頼んだ。特に最後の三重の酒は旨かった。横で飲んでいた男も、気になったのか2杯目はそれを頼んでいた。細やかだが、こういう時間が何とも嬉しい。
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