やはり古本屋で見つけたのが、帚木蓬生著「聖灰の暗号」だった。南仏を舞台にカタリ派の足跡を辿るミステリーである。東大仏文卒の氏でなければ中々書けない一冊だと感心した。物語は今は無きカタリ派の痕跡を辿って行くうちに、火炙りにあった僧侶の遺灰を見付ける。カタリ派は善悪の二元論を唱えたため、神を絶対視するカソリックから見れば異端であった。そのため中世では迫害に遭って消滅したと言われている。ただ迫害したのはカソリックだから、今でも都合の悪い過去を探ると邪魔される。
読んでいてダン・ブラウンの映画「ダインチ・コード(The Da Vinci Code)」に似ているな?と思った。あちらは聖杯でこちらは聖灰、謎解きを邪魔される所もそっくりだ。「ダインチ・コード」のクライマックスの舞台は、南仏の小さな村だった。主人公のソフィーが教会に入ると、村人が集まってきて彼女を取り囲む。彼らはシオン修道会の末裔で、キリストの聖なる血脈を代々守って来た従者であった。そこで観客はソフィーがキリストの末裔だと分かる。確かに南仏ではマグダラのマリアが祀られていて、キリストを連れて来た説があるから、強ちあってもおかしくない話である。ただキリストは神だと思っている人から見れば、それは許せない事である。
ただでさえも南仏のピレネー地方はミステリアスな場所である。岩山には多くの廃墟が残っていたり、海に突き出した一角にひしめき合うように家々が固まっている。その奇妙な光景は黙っていても歴史の郷愁を誘う。奇跡を生むルルドの泉も近くにあり、今でも多くの信者が集まっている。レンヌ・ル・シャトー(Rennes-le-Chateau)の謎も気になるし、そもそもキリストは神なのか人の子だったのか?これを切っ掛けに、その辺りを探ってみたくなってきた。
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