Tuesday, 21 January 2020

旅の必需品

ミシュランには、レストランの格付けで有名な赤本、道路マップの黄色本、旅案内の緑本の3つがある。赤本は本来、知らない町のホテルを予約する時に使う。まだインターネットも無かった頃、これがあれば懐具合と相談して安心して泊まれた。ホテルにはレストランも付いている処が多いので、その評価がいつの間にか味の紹介本になって行った。黄色本は殆ど使った事が無い。今では無料のナビがあるので、もう役割は終わっているのかも知れない。一方緑本は益々好調で、昔はフランスだけだったのが、今では世界の都市に拡大している。

緑本(Michelin Vert)に出会ってから旅が格段に豊かになった。冒頭では、その土地を旅する時のメインルートを紹介している。観光地やスポットはレストランのように格付けされているので、とても効率的な旅ができる。3つ星は「そこだけを目的にして行く価値がある、是非寄りたい所」、2つ星は「その次に訪ねたい所、近くを通ったら是非寄り道を」、1つ星は「お薦めの所、さらに余裕があるなら是非」である。更に訪れた先で何をどう見るか、例えば教会のどのステンドグラスが見る価値があるとか、絶景のパノラマを見るのは何処がいいとか、細かに記している。また町を歩く時のルートも書いてあるから、効率的に廻れるので有難い。

町や村の紹介も細に入っている。例えば2年前に訪れたオーストリアのハルシュタットは有名な景勝地であるが、その礼拝堂の遺骨には故人の年齢職業が記されているとか、映画「史上最大の作戦」の撮影ビーチは、シャラント地方のレ島とか、小話が豊かである。さらに地方の地理、歴史、美術をよく纏めているので、事前に大雑把な土地の知識を得る事が出来る。言語は昔はフランス語しかなかったが、随分前から英語版が普及し始めた。日本語版も実業之日本社から出たりしたが、何故かその後途絶えているのは残念である。ともあれインターネットの時代にあって、この一冊があるとサーフィンしないで済むし、書棚からいつでも取り出して旅の思い出に浸れる。

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