Thursday, 30 January 2020

モロー博士の島

武漢を発祥とする新型ウィルスがどんどん拡大している。今現在死者は170名と云うが、指数関数的に増え続けているから怖い。チャーター便で続々帰国する人達が、ちゃんと隔離されているのだろうか?中国からの旅行者は検疫が済んでいるのだろうか?心配は尽きない。保菌者は誰なのか?目に見えないだけに不安は募る。更に拡大すれば、疑心暗鬼に社会秩序が一気に狂う事にもなり兼ねない。チェルノブイイの原発事故でソ連が崩壊したように、情報開示を怠ると国民感情に火が付くことに繋がる。

思い出したのは、映画「モロー博士の島(The Island of Dr.Moreau)」である。随分前に見た映画だったが、獣を人間化する実験をする博士の物語である。確か最後は博士までもがその獣人の殺されてしまうが、怖かったのは一見して獣か人間か分からない点であった。若くて美しい女性までもが、「実は私も獣人なの」と告白されると、流石にビックリした記憶がある。今回も保菌者が誰だか分からない処に最大の問題がある。日頃何気なく一緒のいる人が、ある時突然保菌者だと分かれば別人になってしまう。「私に近づかないで!」と、距離を置くのも無理はない。

中世ではペストで1億人もの人が死んだ。こちらはネズミからノミを介在して人間に入った。今回の新型コロナウィルスは、コウモリが元凶と言う。どちらも人間世界とは相いれない気味の悪い生き物だ。共存しているから仕方ないのかも知れないが、これを人類がどう克服するか、早い段階で収束してくれればいいが・・・。

Monday, 27 January 2020

ウォリスの浮気

ハリー王子とメーガン妃の王室離脱が話題になっている。英国通のKさんが、小さな声で「イギリス人は黒いのが嫌いだからね!」と言っていたが、思い出すのはダイアナ妃の事故である。当時、エジプト人の富豪でハロッズのオーナーの息子と付き合っていた。パリのトンネルで事故死した時も彼が同乗していた。一説ではダイアナ妃は彼の子供を身籠っていたとも言われていたので、当時は殺されたと噂が立った。生まれれば、英国ロイヤルファミリーにイスラムの血が混じる事になったので頷けた。007の国だから、あってもおかしくない話である。

今回の騒動でよく引き合いに出されるのが、世紀の恋と言われたウィンザー公である。2度の離婚歴のあるアメリカ人女性(シンプソン夫人)と、王位を捨てて結婚した人である。メーガン妃も離婚歴があるから似ている。暫く前に、「歴史の証人 ホテル・リッツ(The Hotel On Place Vendome)」を読んでいたら、ウィンザー公夫妻の結婚後の生活振りを紹介していた。戦争を挟んでフランスに住んでいた二人は、パリでホテルリッツに泊まりよくパーティーを披いていたという。戦後、英国王ジョージ6世が死んだ時、また国王に復帰する工作もあった。ただそれを拒んだのが、妻ウォリスの浮気だった。アメリカ人富豪と密会を重ねる妻に、夫は見て見ない振りをして悩んだという。

今回も王子は奥さんに振り回されている感じがする。王室を捨ててまで取った奥さんだが、将来ウィンザー公のようにならなければいいが、余計な心配をしてしまう。

Saturday, 25 January 2020

台湾の薬膳料理

先日ある会に呼ばれて、銀座のレストランに行った。天香回味という台湾料理の店だった。薬膳料理の鍋版で、スープに入った野菜がメインだった。只管2時間近くも野菜スープを食べ続けると、食傷気味になったが、胃ももたれなくて良かった。それにしても休日の昼と言うのに満席で、わざわざ銀座まで食を求めて来る人が多いのに驚いた。

話題は当然その台湾になった。テレサテンや嘗ての日本の統治時代のニイタカヤマなど、昭和19年で終戦になっていれば、今頃は沖縄のように日本の一部になっていたかも知れない?などと盛り上がった。今では中国が「尖閣列島は台湾の一部」なんて言っているから猶更だ。台湾人は、李登輝始め親日的な人が多く、そのせいか中国人や韓国人のようにギスギスしたものがない。確かに店の従業員の人も、心持ち柔らかい雰囲気があった。

台湾に始めて行ったのは70年代だった。香港から帰国する途中、飛行機のエンジントラブルで台北の空港に不時着陸した。当時は国交が無かったので、乗客はバスで近くのホテルに運ばれて、一夜を過ごすことになった。行った先は後になって分かったのだが、有名な北投(ペイトウ)温泉だった。乗客には大広間で食事が出された。ところが食事が終わる頃になると、若い女性がぞろぞろ入ってきて、壁に並ぶ椅子に座り始めた。暫くすると中年のおばさんがやって来て、「どの子がいい?」と聞かれた。学生の身でカネも度胸もなかったので断った。翌朝またその広間で朝飯を食べていると、玄関から仕事を終えた女性が肩を落として帰る姿が目に留まった。それは侘しい光景だったが、そういう場所でそういう時代だった。そんな事を思い出したりした。

Tuesday, 21 January 2020

旅の必需品

ミシュランには、レストランの格付けで有名な赤本、道路マップの黄色本、旅案内の緑本の3つがある。赤本は本来、知らない町のホテルを予約する時に使う。まだインターネットも無かった頃、これがあれば懐具合と相談して安心して泊まれた。ホテルにはレストランも付いている処が多いので、その評価がいつの間にか味の紹介本になって行った。黄色本は殆ど使った事が無い。今では無料のナビがあるので、もう役割は終わっているのかも知れない。一方緑本は益々好調で、昔はフランスだけだったのが、今では世界の都市に拡大している。

緑本(Michelin Vert)に出会ってから旅が格段に豊かになった。冒頭では、その土地を旅する時のメインルートを紹介している。観光地やスポットはレストランのように格付けされているので、とても効率的な旅ができる。3つ星は「そこだけを目的にして行く価値がある、是非寄りたい所」、2つ星は「その次に訪ねたい所、近くを通ったら是非寄り道を」、1つ星は「お薦めの所、さらに余裕があるなら是非」である。更に訪れた先で何をどう見るか、例えば教会のどのステンドグラスが見る価値があるとか、絶景のパノラマを見るのは何処がいいとか、細かに記している。また町を歩く時のルートも書いてあるから、効率的に廻れるので有難い。

町や村の紹介も細に入っている。例えば2年前に訪れたオーストリアのハルシュタットは有名な景勝地であるが、その礼拝堂の遺骨には故人の年齢職業が記されているとか、映画「史上最大の作戦」の撮影ビーチは、シャラント地方のレ島とか、小話が豊かである。さらに地方の地理、歴史、美術をよく纏めているので、事前に大雑把な土地の知識を得る事が出来る。言語は昔はフランス語しかなかったが、随分前から英語版が普及し始めた。日本語版も実業之日本社から出たりしたが、何故かその後途絶えているのは残念である。ともあれインターネットの時代にあって、この一冊があるとサーフィンしないで済むし、書棚からいつでも取り出して旅の思い出に浸れる。

Sunday, 19 January 2020

ミシュランの栄華盛衰

ミシュランガイド2020が出て、永年3つ星だったポール・ボキューズ(Paul Bocuse)が降格され話題になっている。有名な老舗だったが、やはりシェフが亡くなってオーラが消えてしまったのだろうか?最近ではすっかりグルメの世界とはご無沙汰しているが、そう言えば90年代に3つ星だったあのレストランはどうしているのだろう?そう思って調べてみたら、ニューオータニにも出店しているTour D`Argentや、アサヒビールが買収したLuca Carlton、恵比寿にロブションと組んで6星レストランとして話題になったTailleventは、皆1つ星になっていた。栄華盛衰、驕る平家久しからず、今回のPaul Bocuseもそんな時代の変遷なのかも知れない。

かつてそのPaul Bocuse氏も、「食とセックスは似ている」言っていたのを読んだ事がある。つまりどちらも魅力的でないと長続きしないという意味だ。確かに新たに星が付いたレストランや、給仕がキリっとしている店は、活気があり魅力的(Sexy)である。チュエルリー公園の先にあるLedoyenや、屋根が開いて新鮮な空気が流れ込む一軒家の Le Pré Catelanなど、昔の2つ星が今では3つ星になっているたのには頷けた。そんな中、Guy Savoy やL`Amboiseは昔から3つ星を維持しているから立派だ。 

パリはグルメが文化の一つになっている。正装してレストランに出向く時は気合が入る。作る方も懸命だ。実際に星が降格されて本当に命を絶ったシェフもいたし、ピカピカに磨かれたフォークやグラスを見ていると、オーナーの真剣さが伝わってくる。最近ではすっかり居酒屋の人になって、ミシュランの世界は遠い過去である。ただこうしてパリの1つ星レストラン75軒の内、10軒は日本人シェフの店だったり、日本の星付きは230軒でフランスの118軒を凌駕している話を聞くと、まだまだ頑張っている人達がいる事が分かり勇気付けられた。「たまにはグルメを楽しまないと!」、そんな気持ちになってきた。

Thursday, 16 January 2020

ハントケ氏のノーベル賞

先日、イランのミサイル誤射で、ウクライナ機が撃墜される事件があった。イランは当初関与を否定したが、3日後には認めざるを得なかった。結果的には紛争の長期化が避けられたが、逆に政府の立場は弱くなった。

思い出したのは、コソボ紛争の時に起きたNATOによるベオグラードの放送局の誤爆である。4年前にセルビアを旅した時、その半壊したビルを見に行った。今でも当時のまま保存されていて、広場には犠牲になった人々の写真が飾られていた。セルビアは兎角残虐なイメージがつき纏うが、こうして被害に遭った様子を目の前にすると、そんな気持ちも吹っ飛ぶというものだ。

一方ボツニアの田舎に行くと、セルビア軍に依って無差別に殺戮された人々の広大な墓地もあった。所謂ジェノサイト(民族浄化)で、ワシントンのアーリントン墓地のように一面碑が敷き詰められ、その数の多さに驚かされた。その指揮を取ったのが、ミロシェヴィッチ前大統領である。裁判で有罪になった人だが、2019年のノーベル文学賞を取ったペーター・ハントケという作家は、NATOを批判しミロシェヴィッチを擁護しているという。西側にいるとマスコミが偏りがちになる事は覚悟しているが、ハントケ氏が受賞した背景は何だったのだろう?ただでさえも複雑で分かり難いバルカン半島である。旅の続きで、その辺のカラクリを知りたくなった。

Tuesday, 14 January 2020

Midnight Expressの教訓

ゴーンの逃亡を巡り、レバノンと日本の間で、容疑者引き渡し条約が無い事が問題になった。それを知ってレバノンに逃れたのだろうか?やはりプロが絡むと仕事が緻密になるものだ。

思い出したのは、アメリカとトルコの容疑者引き渡し条約だ。あの映画「ミッドナイトエクスプレス(Midnight Express)」で有名になった実話が発端になった。物語は70年代、トルコから麻薬を持って国外に出ようとしたアメリカ青年が空港で捕まり、当初は3年の刑がその後無期に延長された。過酷な刑務所生活に家族や国も何も出来ず時間ばかりが過ぎたが、最後は脱出に成功して家族の元に帰る。それが切っ掛けで、両国で条約が締結されるようになったという。

ミッドナイトエクスプレスに出て来る青年は、出来心とはいえ麻薬は大きな犯罪であった。国によっては死刑にもなる。ただ映画を見終わった人は10人中10人が、トルコの陰湿な法社会や不衛生な刑務所から脱出出来きた事にホッとする。トルコ側からすると明らかに逃亡なのに、観衆は脱出と母国への生還に喜ぶ。今回もゴーンが映画化する話が持ち上がっているが、日本の狭い刑務所生活や尾行が再現されれば、日本の司法が悪者になってしまう可能性は十分にある。会社のカネを使い込んで背任に問われているのに、人権問題にすり替わってしまう。映画化には気を付けないと・・・。

Saturday, 11 January 2020

統計は語る

昨年、厚生労働省で統計の改ざんが問題になった。勤労統計で全社を対象とするところ、抽出で行ってしまった。それにより、中小企業では賃金が上昇した結論になってしまった。当時はまた政府に付託したと騒がれたが、あってはならない事だった。

統計を取ると、見えないものが見えて来る。昔同僚にIさんという人がいた。几帳面な人で、自身の健康診断の値や読書回数、飲食費など、生活に密着するデータを時系列で取っては手帳に記していた。それを見ていて、自分も取り敢えずΓgtp 値から遡ってみる事にした。20年分の健康診断書からその数値を拾うと、忙しかった時期のΓ値は高く、逆に平穏な時は低くかった。仕事のストレスに比例して酒を飲んでいた事が判明し、苦笑してしまった。

それからは、テニスやゴルフのスコアもデータ化し始めた。例えばテニスの試合結果を〇☓△で残し、年末になると勝率を計算してみた。すると毎年必ず48%の数値になるから不思議だった。中々勝てない実感を、数値が見事に証明していた。ゴルフのスコアもそうだ。恥ずかしいので数値は伏せるが、平均すると毎年殆ど同じ数値に収斂する。そんな数字を頭に入れながら、せめて昨年よりもいい値を出そうと頑張っているが・・・。

Friday, 10 January 2020

奇襲は騙し討ち

カルロス・ゴーンの会見を見ていると、色々考えさせられる事が多い。彼も「今回の逮捕劇はパールハーバーだった」みたいな事を言っていたが、日産と検察が周到に用意した奇襲作戦だった。どうして日産は、彼の在職中に不正を正す事をしなかったのだろうか?海外への送金を預かるのは一般の社員である。経理部長や課長など、多くの社員が関与していたにも拘わらず防ごうとはしなかった。それを差し置いて検察に委ねるのは、ゴーンならずとも納得の行かない点である。奇襲は極めて日本的で、騙し討ち(Deception)と感じるのが普通だ。

もう一つは復讐のやり方だ。今回ゴーン被告が名指ししたのは、西川社長や豊田取締役など日産トップの数名だった。事前にはもっと多くの名前が出て来るかと思っていたが、意外と少なかった。思い出したのは、佐藤優の「国家の罠、外務省のラスプーチンと呼ばれて」である。佐藤氏は北方領土の機材納入を巡り、鈴木宗男氏に連座する形で投獄された。その時の検察とのやり取りを手記を本にし、当時はベストセラーになった。多くの担当官が実名で登場し、密室の尋問がリアルに再現されていたので面白かったが、驚異的な記憶力でネチネチと検察に報復していた。それに対し今回のゴーンの演説はどちらかと言うとカラッとしていて、被告の取り扱いを巡る人権に訴えていた。どちらが人の心に響くのか?これからの展開が興味深い。

日本人は英語に弱いし、議論するのが苦手だ。彼を国内に連れ戻せば有利になるだろうが、外国にいられては所詮勝目はない気がしてしまう。

Wednesday, 8 January 2020

人質救出のプロ

カルロス・ゴーン被告の逃亡を見ていると、映画「アルゴ(ARGO)」を思い出す。ARGOはイラン革命の時に、国を出れなくなったアメリカ人を救出する物語である。今回は音楽機材の箱に隠れたようだが、ARGOでは架空のSF映画をでっち上げ、そのスタッフに変装して脱出した。どちらも綿密に準備計画され、大胆にプロが遂行した点で似ている。因みに先日トランプ大統領が、「もしイランが報復に出るなら、52か所の基地を攻撃する」と言っていた52という数字は、その時に脱出出来ず人質になったアメリカ大使館員の数だった。

人質の救出は、アングロサクソンの十八番なのかも知れない。古くはヒットラーによるムッソリーニ救出や、最近ではランボー(RAMBO)など数多くの作品がこれをテーマにしている。ゴーン被告も、今回の脱出劇の映画化を考えていると囁かれているが、そんな背景があるようだ。

一連のニュースを聞いていると、改めて日本は島国だな!と感じる。失態を演じた司法や検察の在り方は、やはり国から出れない日本人を前提としたものだったから仕方ない。仮にそれが整っても、過激な手段を取るよりお金で解決するのが日本人である。典型的なのは、80年代半ばにフィリピンで起きた三井物産の若王子事件だ。そう言えばあの時、暫くして会社にアメリカ人がやってきた。セキュリティー会社の名刺を渡され、「御社の要人が同じ目に遭った時に救出を手掛けます」と言われた。高額な手数料で何もそこまでしなくても、とお断りした記憶がある。救出のプロがいても、使えないのが日本人である。

Sunday, 5 January 2020

正月の大学駅伝

2020年が明けた。正月早々から、ゴーン被告の逃亡のニュースには驚いた。日産を舞台にした資金の流用も凄いが、大胆な脱出劇にまるで映画でも見ているような感じがした。レバノンと言うとレバニーと称するレバノン料理屋位しか知らないが、改めてレバノン人ってどんな人種?の興味が湧いて来た。

正月は朝から酒を飲みながら、定番の大学駅伝に見入ってしまった。抜きつ抜かれるレース展開も沙流事ながら、確か青学の4区を走った選手だったか、今まで11番目の補欠選手が4年生になって初めてタスキを任され、その上区間新記録を出した美談に感動した。スポーツで後に大成するのは極めて稀だし、諦めず頑張った選手と、ジッと見守ってきた監督にも敬意を持った。

それから途中までトップを走っていたのが東京国際大学だった。あまり聞いたことない大学だな?と思ってテニス仲間のIさんに聞くと、「昔は一橋学院って言う予備校だった!俺はそこに通っていたからな」と教えてくれた。Iさんはその一橋学院から一橋大学に進んだというから、早稲田ゼミナールから早大みたいなるルートだったようだ。ともあれ、2020年はどんな年になるのだろう?オリンピックも楽しみだが、「日々是好日」只管毎日を淡々と生きるのみだ。