Friday, 6 December 2019

バインコーチの本

暫く前まで、大阪なおみのコーチを務めたのが、サーシャ・バイン(Sascha Bajin)氏だった。彼女が落ち込んでいるのを見て、跪いて「君なら出来るよ!」と優しく励ます姿は、当時話題になった。その後、大阪なおみは全米と全豪に優勝し、若くしてランキングのトップに登り詰める事になった。

そんなバイン氏が書いた「心を強くする(Strengthen Your Mind)」は中々面白い本だった。内容は、ルーティンを作る、ストレスに慣れる、怒りは吐き出すとか、良く言われている事ばかりだ。ただ読んでいて妙な説得力があり快い。多分それは、彼が何でもポジティブに捉えよる性格から来ている気がする。前向きの言葉は、何より選手を明るくする。それから、上から目線でなく、選手に考えさせ、自ら答えを導き出させる、寄り添い型の指導もいい。テニスをやった人なら誰でも体験する事だが、他人のアドヴァイスは殆ど耳に入らない。「引きを早く!」「溜めを作って!」などと言われても、大体カチンと来るものだ。心の中では、「そんな事は分かっている!出来ないから困っているんだろ!」と言っている。彼は「何で出来ないのだろう?」と選手に問い掛け、選手が答えに辿り着くまで待つと言う。

何気ない選手の一言に感動するのも、彼の特徴だ。例えば。大阪なおみが次の対戦相手がセレナだった時に大喜びしたとか、以前コーチに付いていたセレナが、酒は強固な意思で止められると言ったとか、本人でも気付かない精神的な強さを見出す能力を持っている。自分でも知らない一面を発掘してもらい、褒められば誰でも嬉しくなるものだ。こんな人が身近にいればヒトは必ず伸びる、そんな思いになる。

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