犬の散歩をしていると色々な人に出会う。先日は犬好きのおばさん二人組がやってきて、「この犬の匂いが好きなのよ!」と言う。どうやら彼らも犬を飼っているようで、本来は臭い動物臭が生活臭の一部になっているようだった。かと思えば不評を買うこともある。
暫く前に、テニス仲間4人でゴルフに行った時だった。車を出してくれないか?と頼まれたので、3人を乗せることになった。普段は犬を乗せているので、前日消臭剤を撒いて掃除したが匂いは消し切れない。当日、開口一番で「臭くてすみません」と言うと、「全然匂わないよ!」と言ってくれたのでホッとした。ただ一人、中年の女性だけは、無言で反応がなかった。それから数日経ってその女性に会った時、「あの時は臭い車ですみませんでした」と改めて反応を探ると、「・・・・・・」と又無言になってしまった。多分この人とは、二度と一緒に行く事はないと悟った。
斯くして、臭いは人を幸福にもするし不幸にもする。有名なパトリック・ジェースキントの小説「香水、ある人殺しの物語(原題 Das Parfum)」は、香が人を支配する事を教えてくれる。主人公のグルヌイユ(フランス語で蛙の意味)は、無類の臭覚を持つ男である。彼はある晩、今まで嗅いだことのない甘い匂いに思わず外に飛び出す。その香りの元を追うとそこには少女がいて、挙句の果て殺人を犯してしまう。暫くして彼は捕らえられるが、処刑される寸前に、その少女の香りをアレンジした香水をばらまくと、群衆はその香りに酔いしれて彼を許してしまう、という物語である。鼻がいいフランス人を理解する上でも格別の一冊と言われ、昔読んだ記憶がある。
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