Monday, 4 November 2019

香港と小説1984

デモが長期化する香港を見ていると、ジョージ・オーエル(George Orwell)の未来小説「1984」を思い出す人は多いだろう。「ビックブラザーが貴方を見ている(Big Brother is watching you)」という有名なフレーズは、独裁者(Big Brother)が常に市民を監視する社会である。香港のマスク禁止令は、正にモニターで顔を特定し管理しようとするシステムだから、それと被っている。

ビックブラザーのスローガンは、War is Peace(戦争は平和)、Freedom is Slavery(自由は隷属)、Ignorance is Strength(無知は力)の3つである。物語は西側(Oceania)、ソ連(Eurasia)、中国(Eastania)の3つの独裁国家が戦争している設定だから、今の世界と似ている。「戦争は平和」は、核の抑止力が軍事バランスを保つ意味なのか? 「自由は隷属」は政府に抵抗しなければ身の安全が保障される事だし、「無知は力」は情報が人心をコントロールするのを指している。特に最後の2つは、香港人が懸念するの今の事象と重なるから凄い先見であった。

オーエルがこの本を書いたのは戦後の1949年であった。初めて読んだのは60年代後半だったか?1984年なんてずっと先だと思っていたが、いつの間ににか遠い過去になってしまった。当時は原書で読んだが、英語力もなく筋が追えなかった記憶がある。ただ先のIgnoranceの意味を「無視」と誤って解釈し、当時は「無視は力」と思っていた。反抗期だった事もあり、そのフレーズのインパクトは大きく、社会への抵抗力になった。オーエルというと、「パリ・ロンドン放浪記」がとても面白い。下町の貧しい人々の生活がペーソスを交えて良く書かれている。「1984」はそんなヒューマンタッチな本とは随分と異なる。最近改めて原書を読み返してみたが、古典だけあって相変わらず英語は難解だ。

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