テレビを見ていると剣岳が出て来た。雄大な北アルプスの景色を見ている内に、そう言えば昔は良く新田次郎の山岳小説に憧れ、夏山に登ったものだ!そんな日々を思い出した。
あれは確か空木岳を目指した中央アルプスの縦走だったか、それは暑い日だった。千畳敷カールから木曽駒を経て宝剣に着いた。険しい尾根を登り切り、山頂で一休みし、その日に泊まる木曽殿山荘を目指した。ところが三ノ沢分岐を過ぎ熊沢岳に差し掛かる頃、水筒の水が底を付いてしまった。喉が渇くが、行き交う登山者も疎らで困り果てた。何を思ったか、バックの中にその晩飲む日本酒がある事を思い出した。禁じ手とは知りつつ、ついそれに手が出てしてしまった。当たり前だが足は重たくなるし、余計喉が渇き、危うく遭難の二文字が頭を過った。幸い何とか山小屋に辿り着き、大事には至らなかったが怖い思いだった。
その縦走では下山の時に、足を滑らし滑落もした。怪我はしなかったが、急勾配の谷から脱出するのが大変で、一人取り残される恐怖を味わった。当時の登山は殆ど単独行であった。それは新田次郎の小説「孤高の人」と関係がある。本では加藤文太郎という健脚の登山家が、最後は遭難して亡くなってしまう。それは普段は単独行を専門としていた彼が、ある時同僚を連れて登山すると彼を気遣う余り、いつものペースが乱されてしまったのである。いつもそれが頭にあったが、今から考えれば自身は文太郎ではないし、真似する事もなかった。
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