Saturday, 20 July 2019

グラーツの町

久々に中公新書の物語シリーズ「オーストリアの歴史」が出版された。この手の本にしては分厚かった。ファンとして早速読んでみたが、正直ガッカリ、馴染みのないカタカナの人物と年表を綴る手法は淡白で、やはり学者の書いた歴史はつまらなかった。取り分け著者は女性だった。当地の専門家として一生懸命に勉強した跡は伺えたが、生々しい歴史に躍動感がなく、「だからどうなの?」のオチがなかった。昔、誰かが男女の仕事の違いを「女性は職務に忠実で、男性は組織に忠実!」と言っていたが、物語にするには感情が要る。

そうは言っても昨年も訪れたオーストリアである。ハプスブルグ帝国やヒットラー、モーツアルトもいるから、何か一つぐらい無いかと辿ってみた。するとグラーツ(Graz)の町が出て来た。グラーツは、オーストリア南部のシュタイアーマルク州に属するオーストリア第二の都市である。ウィーンからは100km程度なので、物価の高いウィーンを避けて泊まるにはいい町であった。市内は路面電車が走るアムステルダムみたいな町で、路地裏では子供がバイトで演奏していたり、中々古風な雰囲気の町だった。翌朝に歴史博物館に行くと、欧州最大の規模と言われる鎧兜が保存されていて、改めて歴史の要所だと知った。特にハプスブルグ帝国の陸路のマップがあり、この町がバルカン半島への起点になった事が伺えた。

先の新書でもその点が触れられていて、それまでウィーンから(イタリアの)トリエステを経由で海路を取っていたバルカンルートが、グラーツが大きくなってからは、スロベニアのマリボルに至る陸路に代わったという。また本では、グラーツの地下駐車場を巡る再開発で市民が大反対した事にも触れていた。それはアヴァンギャルドの芸術と関係あるらしく、戦前住んでいたドイツ人の扱いを戦後に寛容にした歴史から来たという。ともあれ、これだけでも新書に感謝しなくてはと、少し反省した。

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