Saturday, 27 April 2019

シャネルNo.5の秘密

若い頃、ある人からアラミスの香水を貰った。それまで香水とは縁が無かったが、付けて見ると中々いい香りがして、お洒落が増幅した気になった。男性用の香水の特徴は、汗がベースに隠れて居ると聞き、女心を擽る秘密に納得したりした。

その香水で有名なのは、何といってもシャネルの5番だろう。実は一度も嗅いだことがないので、どんなものか知らないが、T・マッツエオの「シャネルNo.5の秘密」を読むとその源泉が紹介されていて面白い。それは、ココ・シャネルが幼少の時に育った孤児院と関係していた。場所はフランスのど真ん中のオーベルニュ地方で、辺りはジャスミン、ローズ、ラベンダーの宝庫であった。それをベースに、銅鍋で煮沸したシーツから立ち上るアロマや、教会の秩序と厳格、磨き上げられた石床を彷彿させるイメージで作られた。数字の5も、教会の五芒星で、土、水、火、空気に次ぐ5番目の元素=スピリットらしい。ココ・シャネルと言うと、やはりT・マッツエオの「ホテルリッツ」に出て来る。30~40年代にリッツを定宿にしていた彼女は、宿の主のように振る舞い、ヘミングウェーのガールフレンドを皮肉る老獪な女性であった。しかし実は名声を得ながらも、不遇な幼少期と寂しい老後のバランスを取っていたのかも知れない。

シャネルのNo.5は、エリザベス・テーラーやグレース・ケリー、イングリッド・バークマンなど世界のセレブに愛された。マリリン・モンローの「夜寝る時に身に纏うのはシャネルNo5だけ」も有名だ。そんな華やかな世界も、暗くて寂しい田舎の孤児院から生まれたと知ると、少し身近になってくる。

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