暫く前に、北朝鮮のスペイン大使館が襲われ、パソコンなどが盗まれた事件があった。犯人はFBIが関与していたらしく、米朝の融和に水を差す結果となった。それにしても今どき白昼堂々と押し入る辺りは、映画擬きの大胆さであった。
日本も同じような被害に遭ったことがある。明治の日露講和条約を巡り、オランダのハーグにある日本大使館から暗号が盗まれた事件である。普通は金庫に入れる暗号表を、ハーグ大使は机に施錠して帰る習慣があった。それを知ってロシアに雇われた職員が大使が帰宅した後に盗み出し、何回かに分けて写真を撮る事に成功した。その結果、日露戦争後の日本の情報が殆ど筒抜けになったという。事件が発覚したのは、関わったスパイにロシアが正当なカネを払わなかったため、スパイが日本側に密告した事による。その辺の様子が、吉村昭著「ポーツマスの旗」に詳しく書かれていて面白い。
何方の事件も、本国から離れた第三国を舞台にしていた。そう言えば、太平洋戦争の終戦工作が行われたのが軽井沢のスイス公邸であった。だから軽井沢だけは爆弾が落ちないと云われていたようだ。東京から疎開した外国人の中にドイツ大使館員がいて、日本人女性との恋を描いた「ヴィオロンのため息」も中々いい小説であった。ハーグ大使館から盗み出したのもロシア美人であった。緊迫した雰囲気に女性が登場すると事件が物語風になる。
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