Sunday, 21 April 2019

祖母の伊勢参り

天皇ご夫妻が伊勢神宮に行かれた。退位報告の儀で、地元では多くの人に迎えられた。ご成婚の時にも訪れたというので、時の流れは一入の思いがあったのか、陛下のみならず、多くの人が自身の人生と重ね合わせて慶ぶ姿が印象的だった。

その伊勢神宮だが、今から40年程前に行った事がある。今は無き祖母を連れての旅だった。祖母は当時80歳を超えていた。ある時、「お伊勢様に行ってみたい」と言い出した。普段は静かな祖母だったが、この時ばかりは、冥土の土産というか、伊勢にお参りしないと彼の世に行けないみたいな事と言う。そんな強い気持ちに押され、最後の御奉公と思い、旅に出ることにした。名古屋まで新幹線で行き、そこでレンタカーを借りた。祖母は水戸黄門みたいな旅の装束に身を包み、伊勢神宮の長い沿道を頑張って歩いた。随分昔なので記憶も薄れたが、境内がやたらに静かだった。お参りが済んだ時には、ホッとした気分になった。

祖母は私が初孫だった事もあり、とても可愛がってくれた。遊びに行くと、帰り際にはいつも両手を握り、拝むように頭を下げるのであった。私も典型的なお婆ちゃんっ子であった。加山雄三の若大将シリーズに、飯田蝶子演じるお婆ちゃんが出て来る。「田能久」のすき焼き屋を舞台に、彼女はいつも息子の牛太郎を差し置いて、若大将を応援する。その光景は何故か懐かしく、見るたびに在りし日の祖母を思い出すのである。祖母は物静かな人だったので、ちょっと飯田蝶子の江戸っ子タイプとは違うが、どちらも明治の女の気性で孫の味方をする。

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