新紙幣が発表された。1万円札の渋沢栄一、5千円札の津田梅子、1千円の北里柴三郎になった。お札の世界はミステリーが多いので、どうしてこの3人なのか?お札のデザインも含めて、これからの謎解きが楽しみだ。それにしても発行は2024年というから、随分先の話である。
ところでその津田梅子だが、日本の女子教育の先駆者は周知の通りである。しかし、彼女が岩倉使節団に留学生として参加したのは6歳の時であった。どうして彼女が選ばれたのか?その後の軌跡を辿る上で大切なポイントである。その答えが、田中彰著「岩国使節団 米欧回覧実記」に述べられていて興味深い。それによると、彼女の父は元佐倉藩士で徳川家士の養子になった人物だった。他の留学生も、9歳の永井繁は静岡の元士族、12歳の山川捨松は元会津藩士、15歳の吉松亮は東京府の元士族を父に持つことから、云わば維新の敗者もしくは下級官員の中から選ばれたという訳だった。氏はそれを「未知の世界への実験台に立つための人身御供」と表現していたが、敗者を踏み台にして勝者の進歩を勝ち取る例だった。
それにしても何が幸いするか分からない。維新の勝者はその後の明治、大正で活躍したが、昭和になり戦争で終わってしまった人が多かった。一方敗者と云われても、こうして女子教育の鏡になり、令和の時代に人々の財布を温める事になった。人間万事塞翁が馬である。
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