Sunday, 3 March 2019

ベトナムという国

米朝会談の場所になったベトナムだが、60年~70年代のベトナム戦争を知る者にとっては隔絶の感がある。多くの犠牲を強いられながら、こうしてアメリカの大統領を迎え、方や中国の支援を受けやって来た朝鮮の小国も歓迎している。特に中国とはその後、中越戦争で大きな衝突があったし、今でも西沙諸島で争っているから猶更である。ベトナムは昔も今も強かな国である。

そのベトナムだが、10年ほど前にホーチミン市を訪れた事がある。昔のサイゴンである。今ではフランスの植民地時代を彷彿とさせる平和な町だったが、突入した戦車やべトコンの地下通路など、戦争の面影があちこちに残っていた。その光景を、かつて見た映画「キリングフィールド」のサイゴン陥落のシーンと重ね合わせた。必死にアメリカ大使館に押し寄せる人々や、残されてべトコンに粛清される人々など、当時の修羅場が蘇ってきて感慨深かった。

夜は若者が集まるクラブみたいな処に飲みに行った。そこに集う人々は東南アジアで良く見る光景だったが、ミュージカルの「ミスサイゴン(Miss Saigon)」に出て来る売春バーを思い出した。ミスサイゴンは、ベトナム戦争に派遣されたアメリカ兵とベトナム女性の物語である。2人の間には子供が出来るが、アメリカ兵はサイゴン陥落と共にベトナムを去ってしまう。何年かして戦争が終わり、そのアメリカ兵は奥さんを連れてベトナムを再訪する。そこで彼は嘗ての女性と子供が健在な事を知る。女性は子供をアメリカで教育させようと、自らの命を絶ち三角関係にピリオドを打つという衝撃的な結末で幕が下りる。以前NYのブロードウェーで観たが、誰もが戦争の犠牲者で、その悲劇を乗り越えて生きて行こうとするフィナーレに打たれた。

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